ずっと見てた。
そばにいて、一緒に笑えて、癒されて。
そんな彼が好きだった。

「おはよー、暁」
「おはよ、今日の寝坊だね?」

一限終わりの休み。
彼は今日も遅れて教室に入ってくる。
俺の隣の席、そこが彼の場所。
頭に少しついた寝癖もかわいらしい。

「おはよう」
「おー、おはよ」

運動大好き、でもちょっと頭は悪い。
けど、その人柄と持ち前の明るさで彼は人気だった。
だから「好き」なんていえるはずもなかった。
彼にはすでにかわいらしい恋人がいたから。

「暁、今日一緒に帰らないか?」
「え?まったく…彼女は?」
「部活だってさー。試合が近いから遅くまで残るんだよ。どう?今日うまいケーキのある店を教えてやるよ」
「…うん、ありがとう」

知らなくていい。
言うつもりもない。
ただ、そばで、話ができればいいんだ。
好き、っていうことも全部俺の胸の中にしまいこんだ。

「……暁は何が好きだ?」
「俺?俺はモンブランかなぁ…でっかい栗が中に入ってるとポイント高い!」
「あはは、なんだそりゃ。俺はチョコだなぁ…甘いやつじゃなくて苦味があるほうが男の俺としてはいいんだよ」

友達。
そういえば聞こえはいい。
あんたは俺の気持ちなんかしらなくていい。
ふと一週間前に受信したメールを見た。

『ごめんなさい。何も言わなくて』

そう送ってきたのは俺の気持ちに気付いたらしい彼の彼女。
謝らなくていい。
俺が勝手に好きになって勝手に事実を知って落ち込んだだけだから。

「暁?」
「ん?どうした」
「ぼんやりしてたら電柱にぶつかるぞ」
「お前じゃないからそんなあほはしねぇよ」

振り向いて。
振り向かないで。
気付いて。
気付かないで。
そんな気持ちが渦を巻く。
俺は偽りの笑顔を張り付けた。
ただ、俺はお前のそばにいられればいいんだ。

だから、何も言わないで。






振り向いて振り向かないで
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