噂が立った。
僕、聖と付き合うと不幸が伝染すると。

「……聖、顔が怖いよ」
「うるさい」

メイクをする暁の隣、僕は座っていた。
暁が自分でメイクをするのは僕のせい。
つい最近立ったある噂のせいで、僕には人が寄り付かないからだ。
でも、モデルという仕事上、どうしてもメイクは外せない。
だから、僕は暁にメイクしてもらった。

「………何さ」
「…気にしなくていいんじゃない?俺たちは不幸なんて呼ばないし」

あっさりと告げた暁。
でもね、違うんだよ。
僕は携帯を見つめた。
一週間連絡のない相手。
今までではじめてだった。

「…あの人も、噂を信じてるのかな」
「案外噂を流した張本人だったりして」
「なんで、そんなことをする必要があるのさ」
「…好きだから」
「え?」
「好きだから自分以外の男と話す聖が気にいらなかったんでしょ」
「嫉妬ってこと?」
「簡単に言えばね」

嬉しい。
嬉しいはずのことなのに素直に喜べなかった。
メイクを終えた暁にメイクを施されながら僕は考えた。

「…僕、モデルやめる」
「は?」
「……彼だけの僕になる」
「はぁ…ま、聖の好きにしたら?」

金は俺が稼ぐし、と告げた暁は衣装に着替えてから控室を出て行った。
僕は電話帳を開いて相手に電話をかける。

「あ…もしもし?あのね、僕モデルやめることにしたの」

電話口の相手はすごく驚いていた。
くすっと笑みがこぼれてしまう。

「モデルやってたらそばにいれないもの…それにね」


『僕は周りを不幸にするけど、本気で愛してる人は幸せにするんだよ』


そう言ったらあたふたとしていた。
怒るつもりもない。
ただ嬉しさにこみ上げてきた笑みを抑えると僕は夕方には帰ることを告げて今日の撮影にのぞんだ。
これが終わったら僕は彼だけの僕になる。

愛しいゆえに、嫉妬させてしまった。
彼が愛しいゆえに僕もまた嫉妬する。


嫉妬ゆえの愛
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