僕は聖。生まれ変われる前はそれは売れっ姑の男娼だった。
僕のために一晩で何千万と動く。
僕は抱かれるのがキライではなかった。むしろその暮らしが好きだった。
付き人たちにはいい思いをさせてやるし、花町の仲間にも力になってやれる。
でも、心のどこかでは寂しかった。満ち足りた暮らしの中にはただ一つ、本気の恋愛がかけていた。


「聖(ひじり)太夫、お呼びだよ。いつものお大臣様だ」
「はいはーい」

日が沈み、花町に灯が灯るころ。
僕はいつもの用意をして自分の本部屋へ向かっていった。
そこにいるのは最近贔屓にしてくれる男が一人。どこかの社長だと聞くけれど、果たしてマトモな職業なのか。

「やぁ、聖太夫」
「こんばんわ。今夜も来てくれたんだ。。ふふ、これで九十八日目」
「約束どおり百日通ったら俺のものになってくれるね」
「さぁ。どうだろう」

客と男娼、その掛け合いの中に恋愛はない。
ただ、体を売り、体を買う。そして互いの欲望を満たすだけだ。
行為のあとのけだるさの中、僕はぼんやりと天井を見上げていた。
ここにいて長い。そろそろ年季も明けてしまう。
その前にこの男に身請けされ、囲われれば幸せに生涯を送れるのだろう。
でも、それじゃぁ僕が満足できない。本気の恋愛がしたかった。
ただ一人の男を愛して愛されて。そんなの、僕に許されるはずがないとわかっているのに。


「聖、お前どうしたんだ」
「なに」
「最近やけにぼんやりしている。ははん、さては例の百日通いだな?あさってか…」
「楼主は、僕に身請けされてほしい?」
「お前は一番の稼ぎだからな。いなくなられたら少し痛いが…まぁ、次はいる」
「そう」

替えのきく男なんだと言われた気がした。
そう、"僕"を必要とするやつなんていないんだ。
そう考えるとすべてに絶望した。
身請けの話も断ろう。もうここで死ぬ。

「聖太夫、身請けは考えてくれたかな」
「その話なんだけど」
「むろん、断るはずないのは「断るよ」」


自分の居場所は確かにここだけだ。
誰に求められても、愛されない僕がいていいのはここだけ。
男の目はギラリと光った。懐から出したのは蝋燭の灯りに光を跳ね返すナイフ。


「心中するつもりっ!?」
「あぁ…お前が来ないと言うならば殺すまで」

逃げようとした僕は男に着物をつかまれて転ぶ。
そして振りかざされるナイフを見た。




「本気の恋愛したいわけ?」

今僕は、魔術師によって甦らされた。
今の名はセイ…聖だ。
人間の執念は恐ろしい。
僕は執念によって魔術師を読んで生き返ったのだ。

「うん。君と生きて、君を愛して愛されたい」

真面目な顔をしながらそんな恥ずかしい台詞を紡ぐ男は僕の運命の人?
わからない。
でもひとつだけ確かなことがある。


「…愛してるよ、……」





もう一度生きられたなら、そのときは幸せな恋をしたい。
流れる川の行く末は
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