あの方に会ったのは二度目の転生の時。
また、愛しい人を守れずに死なせてしまい、途方にくれていた私の前に姿を見せた。

『狐?それも、転生を経験した狐か』

長い銀色の髪に、赤い瞳。
海の向こうの人間のようだ。
違う人種なはずなのに、人なのに、その言葉の意味がわかる。


『私は銀。君は?』
「倖…」
『人の幸せ…ふむ、君に名を与えた主は君を妖怪ではなく、人として接していたのか…』

この人は私の主を知らないはずなのに、どうして私の名前の意味を知るのか。

『また、転生するのかな?』
「はい…」
『そうか。では、また、次に会おう』

再び私がこの世に生まれるのはいつになるかわからない。
なのに、不思議とその人に再び会う気がした。


『覚えていてくれ、私の名は銀だ』


その人、銀はそう言い残し、私の前から姿を消した。
彼には、二度目、三度目…それから八度目まで、転生すると毎度のことのように出会った。

『君は本当にその主が大切なんだね。だから何度も転生する』
「あの方は私にとってすべてだから…あの方は私を守って死んでしまった」

大好きだよ。
そう言ってくれた人。
儚げな笑みを浮かべて、力がないのを嘆いていた。
自分は弱い。
都の人たちを守ってあげられない。

「だから、今度は私が守るの…あの方を」
『ほう…だが、君はもう九尾になった。それ以上は転生できないよ?』
「わかってます…」
『……倖、私とともに来ないかい?』
「え」


目をパチクリさせて私は銀を見つめた。
彼は手を差し出して私に笑いかけてきた。

『君の主を見つけてあげよう。私とともにくるのなら、その狐の姿を人間にしてあげよう』
「人の…?」
『そうだ。君の毛並みは美しい銀色をしている。だから、銀の髪に、そしてよくはえる真っ青な瞳だ。体は華奢で、誰よりも美しい』

どうだろう?
彼はそう言って腕を広げた。

『おいで。倖、君と私はこれから家族だ』
「…はい」

うなずいた私はそのまま静かに銀の手に自らの前足を載せた。
その瞬間、私は人の体をもらっていた。
白く滑らかな肌、さらりとした髪、私は近くなった銀の顔を見た。


『いい子だ。おいで、倖。私の家族よ』


小さく笑った彼に私も笑いかけた。
そのまま私は彼とともにかつての主の墓の前を離れて行った。






君の手
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