聖は紙とペンを前に座っていた。
なにを書こうかと考えながらも手は勝手にペンを取る。

『久しぶり。元気?
きっと貴方のことだから、変わらずにお店に変なものを仕入れてるのかな?
あの二人の元気にしてる?ちゃんとお給料払わないと嫌われちゃうからね。

貴方がいなくなって一年が経ちました。
さびしくて泣いてばかりいた僕もちょっとだけ持ち直したんだよ。
でも気付いたら貴方の姿を探してる。ふと振り返ったらいつものように薔薇の花束を抱えて立っているんじゃないかって。
貴方は寂しくない?一人になりたくないと言ったけれど、貴方はなにも言わずにいなくなってしまったね。
ただきっと、貴方がいなくなったことには何か意味があるんだと思う。
僕はただ、貴方が元気でこの空の下、どこかであのお店を開いていると想うだけで少し元気になれるんだ。

あのね、貴方からもらった薔薇の花束は銀に時間を止めてもらってずっと綺麗なままにしてあるの。
ピアスだって壊れないように、ほこりがつかないように大切に箱の中にしまってるの。
僕と貴方をつなぐものだから。

貴方が銀に対価を払ってくれたから今、僕はこうして生きていられる。
貴方を愛して、貴方に愛された僕が消えずにいるのは貴方のおかげ。
貴方に置いていかれた寂しさも、一人横たわるベッドの広さも、慣れることはないけれど、
あなたが笑って、と望むなら、僕はいつまででも笑っているから。
だからもし、再び会えるのならば、そのときは一日中泣いてもいいかな?

愛しい愛しい僕の店長さんへ…
今日もまた僕は貴方を想い手紙を綴る。
届くことはないのだろうけれど、きっとまたいつか二人言葉を交わせる日がくるまで…

×月×日
貴方を想う人形より』

ペンを置き、聖は封筒に手紙をいれた。
住所も宛名もないそれを手に聖は郵便局へと向かう。
自分の家の住所を記していないから、きっと届け先不明として郵便局に保管され、いつか捨てられてしまうのかもしれない。
それでも聖は書くのをやめようとはしなかった。

「貴方に届け、この想い」

聖は今日も手紙をポストにいれた。


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