その電話がかかってきたのは、日曜日の昼間。
一日を過ごす相手もいなくて、ちょうど暇をしていた。
「もしもし?」
『あぁ…アキ…』
聞こえた声に、はて誰だったかと首をかしげる。
少しかすれた声には聞き覚えがあった。
「あぁ…どうかした?」
『風邪引いた…』
「じゃ」
『きるなよ…悪いんだけど、看病してほしい』
「拒否」
間髪いれずに切ろうとした携帯を後ろから奪われた。
「もしもしー?今から暁をそっちに向かわせるから安心してね?」
「せ、聖っ何を勝手に!」
「いいじゃん。たまにはしてあげたら?」
聖に背中を押されて渋々と言った様子で出かける。
もちろん手には熱さまし用のシートや、おかゆなどを持って、だ。
「…どうしてオレが」
ため息をこぼしつつも前から渡されていた合鍵を使い、中に入る。
奥の寝室で咳が聞こえていた。
「きてやったよ」
「あぁ、暁…」
仮病ではないらしい彼は熱のせいか、少しばかり赤い顔で暁を見つめた。
そんな顔をされてしまうと、暁は面倒を見るほかなかった。
汗をかいた体を拭いてやり、持参した粥を温めなおして食べさせてやる。
「あぁ…少しは楽になったよ」
「…」
「ありがとうな、暁」
「本当だよね。俺一人じゃなにもできないくせに」
「ごもっとも」
苦笑をもらした彼はそっと暁を引き寄せた。
「ほんと、バカみたい…」
「オレはバカだからな」
瞳を閉じた二人は唇を重ねた。
「きてくれたついでに添い寝してくれるとありがたい」
「……」
無言のまま見つめる暁に彼は苦笑する。
「いや?」
「…風邪うつしたら怒るからね」
「暁は頭いいもんな」
そんな会話を交わしながら暁は彼の隣にもぐりこむ。
熱を帯びた体がくるまっていたせいか、少しばかり熱すぎる。
「…あんたは自分で自分をずっとバカだって言ってたけど」
言葉を切った暁は自分のそばにある顔に笑いかけた。
「……馬鹿でも風邪ってひくんだね」
はちみつトーストよりお借りしました
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