「はれ…?」
それをはじめに見たのは暁だった。
デートをしていたのだったが、気に食わなかった男だったため、途中で放り出して逃げてきたのだ。
自宅に戻る途中の公園、近道をして帰ろうと思ったのが仇となった。
「また、そんなことを」
「本当だって」
噴水前のベンチで楽しげに笑うのは、倖。
その隣には見知らぬ男がいた。
「倖、ひどいよ。いつだって本気なのに」
「まぁ、この前同じ言葉を女性にいってましたよ?」
「うぇっ」
「嘘です」
楽しげな二人ははた目から見て恋人そのもの。
暁は二人に見つからないようにそっとその場から離れた。
そして急いで自宅に戻る。
「ちょ…まじ、大変!」
「…なんだ、暁」
「どうしたのー?」
血相を変えて帰ってきた暁を郁と聖は不思議そうに見つめた。
「倖が…」
「なんだ、あいつに彼氏でもできたか」
そんなことはないだろう、と郁は笑う。
ところが聖は暁の様子を敏感に感じた。
「まさか、倖が男といたの?」
聖の問いかけにうなずく暁。
それを見た郁と聖は顔を見合わせた。
「…そうか」
「倖はもてるからねぇ」
リビングで額をつき合わせてどうするか考える。
倖が自分たち以外のほかの男と一緒にいるのかと思うと少しイラつく。
「ただいま帰りました」
玄関で倖の声がした。
視線を合わせた三人は立ち上がり、倖を出迎える。
「お帰り、倖〜」
「ただいま、聖」
「…倖、話が」
「今日の夕飯はとんかつですよ」
「とんかつっ」
きらきらと顔を輝かせ、郁の言葉をさえぎったのは聖だった。
倖の手を引き、キッチンへ消えていく。
取り残された郁と暁は顔を見合わせた。
「…暁、もう少し調べておけ」
「うん、わかった」
嫉妬を隠さない二人はその暗い炎を胸のうちに宿しながら、聖と倖のあとを追い掛けてリビングに消えた。
嫉妬深い君に
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