かわええ奴なんやけどなぁ


 


散らばった紙と、見上げる彼女


「っ!…謙也ぁ−…」

「え…?」


放課後、部活を終えた謙也は
委員会で帰りは丁度同じ時間ぐらいになると言っていた彼女
名前を校門で待っていた


「ごめん謙也!お待たせ!」


なかなか来ない名前に、遅いな−とか思って校門によっ掛かっていれば
バタバタと走る音が聞こえ


「おう、って…何やその荷物?」


振り返れば、走って来た名前
腕にはたくさんの紙を抱えていて


「あ、これ?委員会の資料、急いでたからそのまま持って帰って来ちゃった」


にこりと微笑む名前は、そう言いつつもきれた息を整えた


「別にそんなん急がんでも、先に帰ったりせえへんで?」


前屈みになった名前の前髪を、さらりと指で流せば
名前はちらりと謙也を見上げる

知らんやろ?俺、名前のその仕種めっちゃ好きなんやで


「俺ん家、よっていかへん?」


夕食などによく名前を誘う謙也
謙也の家に行くのには、もう慣れていた
明るい謙也のお母さんやお父さんとも仲良しで、玄関の扉を開けば
謙也のお母さんが笑顔で出迎えてくれる


「名前ちゃん、いらっしゃい!」

「おじゃまします」


天然で、ふわふわとした雰囲気をまとう名前
初めて家に呼んだ時から、おかん達は名前を気に入っとった


「名前、お茶持って行くし、先に部屋行っとってや」


謙也が名前にそう言えば、名前は分かったと言って階段を上がって行く

謙也の部屋の扉を開ければ、見慣れた部屋
部屋の端には、ちょっと苦手な謙也のペットも居て
持っていた資料を下におろし、それに背を向けて座れば


「…え!?」


何かが、ガシャンと音を立てた


お茶とお菓子を持って部屋の扉を開けば、何故か涙目の名前


「これ、どうにかしてっ…!」


なんや?とか思いながら名前の指差す先を見れば
名前の制服のスカートを、スピーディーちゃんがあむあむと噛んでいた


「あ−…、いつの間に出て来たんやコイツ」


たまに脱走するイグアナを、名前のスカートから放し、カゴに戻せば
名前はぎゅっとスカートを握りしめる


「すまんな、名前」


ぺたりと座っている名前の前に膝をつき、名前を見れば
ぎゅっと抱き着いて来て
隙間からは、その頬に涙が流れているのが見えた


「多分、アイツも名前の事好きなんやと思うで?」


ぽんぽんと名前の背中を叩きつつ、スピーディーちゃんのカゴを見れば
じっとこちらを見詰めてくるイグアナ

もう長年アイツを飼っとる俺としては、かわええ奴なんやけど…

女の子はやっぱ、爬虫類とか苦手なんやろなぁ…



END

(落ち着いたか?)

(うん、…っ!謙也、こっち見てる…!)





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