この先もお前から目が離せそうにない
彼女は、とてつもなく運動オンチで
とてつもなく方向オンチ
「きゃっ…!!!」
教室移動の為、名前と一緒に階段を下りていれば、小さく響いた悲鳴
バサバサと教科書などが下へと落ちる中
前を行っていた彼女の体が下へと落ちる前に
その体を自分の方へと引き寄せたのは、柳だった
「頼むから、階段を転げ落ちるという事態だけは避けてくれ」
腕の中におさめたのは、ドジっ子な彼女、名前
「う、ごめん、ありがとう、びっくりした…」
俺の方が数倍驚いているという事は、彼女には教えない
ふわりと首元に名前の頭が乗せられたかと思えば
腕の中にいる名前からは、速い速度の心拍数が伝わった
ちらりと柳が名前を見れば
ぎゅっと自分の制服が握りしめられている
相当怖かったのだろう
「っ!?きゃっ!!!柳!?」
階段のおかげで、身長差は縮まり
彼女を抱き上げるのに苦労はない
いきなり抱き上げられた事に驚いた名前は
いつもより近くなった柳の顔に
「え、なに?怪我してないよ?」
と、柳に話しかけた
さっきまで柳の首元に埋められていた顔は少しだけ眉が下がり、不安げだが
「名前が歩けば、怪我をする確率98%」
柳の言葉を聞けば、ふわりと微笑む名前
「もう大丈夫だよ」
そんな声は聞こえたが、教科書を拾った柳は
名前を抱き上げたまま、階段を下りて行った
「や−な−ぎ−?聞こえた?」
「教室に着いたら下ろしてやる」
俺はこの先も、お前から目が離せそうにない
END
(あれ、理科室ってこっちじゃなかった?)
(そっちには図書室しかないが?)
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