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 跡部編

▼跡部の朝



朝は、決まった時間に目が覚める。
部活の朝練前に自宅でトレーニングをするのが、俺様の日課だからだ。


「ん…」


ふわりと心地好い温かさに、珍しくまだ寝ていたいと思いつつ
跡部はけだる気に瞳を開いた。


「おはようございます。景吾様」


目覚めと同時に自室のカーテンを開き、振り返り礼をしたのは跡部専属の執事。
跡部が眩しそうに額に手を翳し、ちらりと執事を見ると
頬にふわりと何かが触れた。
パタパタと動く耳。


「ふ…、どうりで」


跡部にぴとりとくっつき眠っていたのは、先日拾った子猫のまこだった。
跡部は小さな体に手を沿えると、その鼻筋にキスをする。


「お寝坊な姫様だぜ」


甘く微笑み呟いた跡部に、執事はくすりと微笑み
跡部からまこを受け取った。


「起きるまでマルガレーテと一緒に寝かせておけ。俺様は外を軽く走って来る」

「かしこまりました」


end



▼まこと一緒に初登校



「行ってらっしゃいませ。景吾様」


学校の前に横付けされたリムジン。
朝練が休みで、丁度一般の生徒と同じ時間になった為
リムジンから執事が下り扉を開くと、辺りはざわつきを増した。


「おー。相変わらず、派手な登校やな」

「くそくそ!俺も車通学したいぜ」


一般生徒に混ざり歩いて校門をくぐっていた忍足と向日は
ざわめきに振り返り、車から出て来た跡部に
きょとんと目を見開いた。


「なんやあれ」

「さあ…?」


人混みで跡部のもとへは行けなかったが
確かに跡部はテニスバックとは別に、猫鞄を持っていた。
跡部の通る道は自然と生徒が二手に別れ、道が出来る。
忍足と向日は跡部の後を追い、真っ直ぐに跡部のクラスへと向かった。


「跡部!なんだよその鞄!」

「アーン?なんだ朝っぱらから」


跡部のクラスに入ると、跡部は椅子に座り鞄を机に置いていた。
向日の後から忍足もクラスに入ると、丁度鞄からにゅっと子猫が顔を出した。


「……は!?猫!?」

「おいおい跡部、ええんか?こんなん学校に持って来て」


ふわりと子猫を抱き上げる跡部に、忍足はため息をついた。
子猫に気付いたクラスの数人は、ちらちらと跡部達の方へ目を向ける。


「ここでは俺様がルールだ。文句なんか言わせねえ」


ふと微笑み、子猫の頬にキスをした跡部に
忍足と向日は驚いた様に目を見開いた。

デレデレやな、跡部。

忍足が呆れていると、向日は嬉嬉と身を屈め子猫を見た。


「うわー、めちゃ可愛いじゃん!」

「ふ、当たり前だ」

「なあなあ、触っていい?」

「アーン?駄目に決まってんだろ」

「小さい手ぇやなぁ。お、肉球ぷにぷにやわ」

「おい!勝手に触んな眼鏡!」


微笑んだり、独占欲をあらわにしたり
珍しく表情を変える跡部に、周りでその様子を見ていた女子生徒達は
顔を赤らめ興奮気味に声を上げた。


end

何故跡部が学校にまこを連れて来たのかというと…

学校まで車で行く為、まこも一緒に乗せて来た跡部。
到着までねこじゃらしで遊び、執事が「到着しました」と言うと跡部は下りる準備をした。が
車を下り執事にまこを渡すとまこが心細そうに小さく鳴き


「…チッ」


途中まで歩いた跡部は振り返り、戻ってまこの頬を優しく撫でた。


「一緒に来るのか?」


こうして、まこは猫鞄に入れられ一緒に学校へ行ったのでした。



▼困った事


僕、跡部まこ

数日前まで人間だった僕は、いつの間にか野良猫になっていた。
転生ってやつだろうか?
人間だった時に僕は何をしていたのか、どうして猫になったのかは全く記憶にないが
人間の事はよく分かる。
だから、僕を拾ってくれた跡部がどれだけお金持ちかもよく分かるのです。


「まこ、マッサージするぞ」


なんて、跡部が言うから跡部が僕をマッサージするのかと思えば…
巨大なホールに椅子を置いた場所で、僕は専門の人間に
跡部はマッサージ師にマッサージされ
驚いた。


「まこの部屋も必要だな」


とか言うから、猫ベッドを買ってくれるのかな?と思っていれば
翌日から跡部の部屋の改装工事が始まり、まさしく僕の部屋が
跡部の部屋の中に作られた
(跡部の部屋に合わせて造りはヨーロッパ風。大きくふわふわのベッドに猫タワーもといジャングルと何をそんなに入れるのか、僕専用のクローゼット。革のソファー、高級感漂うその他諸々)



「まこ。買い物行くぞ」


とか言うから、跡部でも普通のペットショップとかに行くのか。とか思ったら…
両親と合流した跡部はベンツ2台をブランドショップに横付け、貸し切り


「景吾、これはどう?」

「父さんはこれがいいな」


僕に洋服や首輪を宛がい、端から端まで見た挙げ句


「ここからここまで、全部買う」

「ありがとうございます…!」


僕、あんなの始めて見た。


荷物は宅配してもらうようにし、ベンツに乗り込んだ跡部
これでさぞまこも喜んだだろうと
にょーんとまこを抱き上げると


「アーン?何が不満なんだ」


耳を逆立てたまこは、ふわりと跡部の両頬を肉球で挟んだ。


end

跡部、美味しい物を買ってくれたり
ねこじゃらしを買ってくれたりしてくれるのは嬉しいんだけど…

そんなにいらない。




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