「柳の忘れ物」


 


仁王に頼まれた、小さな匂い袋


「みゃぁ−(えっと、右?)」


それは、大好きな彼の忘れ物でした


「名前、また昼にな」

「行きましょう、柳君」


いつもの様に朝練が終わり、着替え終えた丸井達と名前が戯れていれば
風紀委員と生徒会の集まりがあるらしい真田と柳生、柳は
ふわりと名前の頭を撫で、先に部室を出て行った
丸井達も何やらやることがあるらしく、今日は早めに部室を出て行って
サボった事が真田にばれ、走らされていた仁王と切原が部室に入って来れば
名前を抱いていた幸村も、名前を切原に渡し、部室を出て行く

そんな時に仁王が見つけのが、小さな匂い袋


「あれ、それ柳先輩の匂い袋じゃないっすか」

「忘れて行ったみたいじゃな」


匂い袋を持ち上げた仁王に、名前を抱いていた切原が近付けば
確かにそれは柳が部活前に持っていたもので

この匂い袋は、柳が、落ち着く匂いだと言って持っている物だった
ふわりと香るその匂いは、名前と同じ匂いがする


「名前、柳は生徒会室におるけん、渡しに行ってきんしゃい」


そうして首にかけられた柳の匂い袋
という訳で、僕、名前は
柳にこの匂い袋を届けに、生徒会室に向かっています


「あれ、名前?」


まだ生徒のいない廊下を歩いていれば、前から歩いて来たのは
さっき別れたばかりの幸村


「ふふ、何やってるの?」

「みゃぁ−(今ね、柳にこれ届けに行ってるんだ)」

名前がふわりと幸村の脚に体を擦らせれば
幸村はしゃがみ込み、ふわふわと名前の体を撫でた
テニスバックを持っているという事は、まだ教室には行っていないらしい


「あれ、それは柳の匂い袋だね、忘れ物?俺が届けてあげようか」


名前が幸村を見上げれば、名前の首にかかっていた匂い袋に気付く幸村
匂い袋を首から取った幸村は、変わりに、とポケットから何かを取り出した


「さっき丸井に飴を二つ貰ったんだけど、甘すぎて食べきれなかったから、ジャッカルにこれを届けてくれるかい?」


幸村に差し出されたのは、苺柄の包装紙の飴


「みゃ(ん、これを、ジャッカルに渡せばいいんだね)」


名前が飴の包みをはむっと噛めば
ジャッカルは階段を上った左の資料室にいると思うから、と言って
幸村はどこかへ歩いていった

こうして、柳の匂い袋は、丸井の飴に変わりました


「あれ、名前?」


資料室に行けば、ちょうど資料を抱えたジャッカルが
資料室から出てきたところだった


「それ、ブン太が持ってた飴か?」


近づいて来た名前に、ジャッカルがしゃがみ込めば
名前が飴をくわえていることに気づく


「みゃぁ−(幸村が、甘すぎるから食べてって)」


手を出して見れば、名前はぽとりとジャッカルに飴を渡した


「くれるのか?サンキュー名前、あ、部室に帰るなら、真田の面下、部室の机に置いといてくれ、さっき知らない剣道部の奴から預かったんだ」


そう言って飴を受け取る変わりに
ジャッカルが名前の首に巻いたのは、真田の面下


「なぁ(うん、持って帰るね)」

「じゃあな、名前!」


こうして、丸井の飴は、真田の面下に変わりました


「おや?名前?」


部室に帰ろうと来た道を戻っていれば
ばったり会ったのは、階段を下りて来た柳生


「どうしたんですか?あれ、それは真田君の面下ですね」


しゃがんだ柳生にふわふわと頭を撫でられたかと思えば
柳生は名前の首に結ばれていた面下を解いた


「私が真田君に渡しておきましょう」


面下を鞄に直した柳生が、かわりに
と取り出したのは、仁王の変装眼鏡


「私の鞄に混ざり込んでいた仁王君の変装眼鏡を、まだ部室にいるであろう彼に、返しておいてくれませんか?」

「なぅ(分かった、仁王にこの眼鏡を渡せばいいんだね)」


それを名前の首輪に引っ掛けた柳生は、気をつけて戻るんですよ?と
職員室の方へ歩いて行った


こうして、真田の面下は仁王の変装眼鏡に変わりました


「あれ、名前じゃん!」


そろそろ部室に帰らなくてはと、階段を下りて行けば、次に会ったのは丸井


「ん?それ、仁王の眼鏡?俺教室隣だし、渡しといてやるよ!」


名前を抱き上げた丸井は、手に触れた仁王の眼鏡に
笑いながら名前を撫でた


「あ、そういえばさっき、用事が出来たから変わりに渡してくれって幸村に頼まれたんだけど…」


抜けていった眼鏡に、名前が丸井を見上げれば
また決まり文句の様にそう言い出した丸井
また届け物?と、名前が首を傾げれば
丸井がポケットから取り出した物は


「これ、柳の匂い袋なんだけど、俺ジャッカルのとこ行くから、生徒会室にいる柳に渡しに行ってくんね?」


それは、最初に交換された柳の匂い袋だった


「みゃぁ−(あれ、戻って来た!)


こうして、巡り巡って名前の元へと戻って来た柳の匂い袋


「みゃぁ−(柳?)」


ブン太の教えてくれた生徒会室に行けば、ちょうど柳は一人残っていて


「名前?」


とととっと早足で柳に駆け寄れば、ちょっと驚いた表情の柳は
ふわりと名前を抱き上げる


「ふ、これを、届けに来たのか?」


首に下がった匂い袋を見た柳は、もふっと頬に頬をくっつけてくる名前に微笑み
名前の耳に、ふわりとキスをした


END

(みゃぁ−(や、柳!またそれするっ…!))

(ふふ、この手は、忘れ物をした俺への鉄拳なのか?)

こうして、頬に軽い肉球の鉄拳を感じつつ
柳は名前を部室に連れて帰ったのでした



::あとがき
リオン様よりリクエスト
テニスの王子様連載番外編で、柳が部室に忘れ物をしてしまい気付かずに教室へ…
気付いた主人公が学校探検をしつつ、届ける内容の甘甘でお願いしたいです。
との事でしたので、書かせて頂きました!
とりあえず、20.5の柳の持ち物検査を見て匂い袋キタこれ!となり
どうせなら巡り巡って戻って来た話しにしよう!とこんな感じになりました(^p^)
リオン様リクエストありがとうございました!

お粗末様でした。





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