幼なじみvs同じクラスの仲良しくん


 


夕日が差し込む教室に、彼と彼女はそこにいた


「なんで、お前がここにおんねん…」


開かれた窓からはふわりと生温い風が吹き抜け
彼の茶色い髪と彼女の綺麗なクリーム色の髪をさらさらと靡かせる
窓際でふわりと微笑み眠っている彼女を見詰めていた彼に
教室に足を踏み入れようとした白石は瞠目し、思わず立ち止まった


「やあ白石、君こそこんな時間に何のようだい?」


教室にいたのは、青学の学ランを着た不二だった
彼女から白石に視線を移し、にっこりと微笑む不二に
白石は無意識に眉根を寄せる


「別にええやろ、自分の教室や、それよりお前や不二、何勝手に中まで入って来とんねん」


口調は普段通り冷静だが、内心は穏やかではない


「ちゃんと許可はとったよ、今日は名前に誘われてここまで来たんだ」


白石が入口の柱に寄り掛かり、不二を見れば
にっこりと微笑んだ不二は、ふと彼女に手を伸ばした


「何の真似かな?白石」


その姿を見た瞬間
白石は不二が彼女に触れる直前に思わずその手を掴み止めていた
まるでそうなるだろうと予期していたかの様に
不二は別段驚く事なく彼女から白石に視線を移す


「いやー、寝込みでも襲うんちゃうかなと思うてな」


にっこりと微笑む不二に、白石も負けじとにっこり微笑んだ
まるで吹雪でも吹き付けているかの如く冷えた空間に
うふふあははと微笑む二人の間には、人知れず火花が散っている
そんな二人に挟まれながら、それに全く気付かず
すやすや心地好く寝息を立てる事が出来るのは、彼女ただ一人だけだろう


「不二くん、名前寝とるし今日は諦めて自分ははよ家帰りや、名前は俺が責任持って家まで送りとどけるし」

「ふふ、冗談はその奇抜な頭だけにしてくれないかな?今日は僕が先約なんだ、名前は僕が連れて帰るよ、白石こそ早く帰ったらどうだい?」

「阿保言いなや、誰が好きな子と他の男を二人っきりにさせて帰るか」

「僕と名前は幼なじみだからね、名前の寝顔はもう何度も見たし、一緒に昼寝した事だってある、僕は名前の家を知ってるけど、白石は名前の家知らないだろ?」

「なんや、知らへんの?俺はたまに名前と一緒に帰るし、家も通り道やから知ってんで、ちゅーか、君ら幼なじみ言うても昔昔少し一緒に過ごしただけの話やろ」

「幼なじみに変わりはないだろ?名前が引っ越した今でも親しくしているし、というか…へぇ…、一緒に帰ったりしてるんだ?それは少し狡いね」

「俺は中学でクラスずっと一緒やから、仲ええで」

「ふふ、別に仲良し止まりだから羨ましくもなんともないよ?」

「それはこっちの台詞やで」


すやすやと眠る名前の頭の上で、笑みを絶やさず自慢し合う二人は
優しい笑みというよりむしろ怖かった


「ん…、あれ…周くん?と…蔵ノ介くん?」


そんな中、まだ眠そうだがやっと名前が目を覚まし
頭上にある二人の顔をぼんやりと見上げた


「ふふ、二人とも仲良しなんやねぇ」


ぽやんとした表情で、二人を交互に見詰めた名前は
猫の様に目元を擦っていた手を止め、ふわりと微笑む
白石と不二は、そんな名前に一瞬思考を停止させたが
白石は自分が不二の腕を掴んだままだった事に気付き
心底嫌そうな表情を隠し、そっと手を離した


「別に仲良しとちゃうよ、ただ不二くんが名前に悪戯せんように掴んどっただけや」


白石がふわりと微笑み、紅くなった名前の目元を撫でれば
名前は撫でられつつ苦笑した


「えぇ…、周くんうちに何かしようとしてはったん?」


名前がちらりと不二を見れば、不二は白石とは反対側の頬に触れ
次いで名前のふわふわ軽くうねった髪を指に絡めた


「ふふ、久しぶりに名前のふわふわな猫っ毛を見たらぐしゃぐしゃにしたくなってね」


そのまま髪を持ち上げ、ふわりと唇を落とせば
白石が微かにムスッとした表情を浮かべたが
名前はそんな不二の行動は昔された事があり気にも止めなかった


「ありがとう蔵ノ介くん、危うく周くんに人為的な寝癖つけられるところやったわ」


苦笑しつつ白石を見た名前に、不二はやれやれと小さくため息をつき
名残惜しげに髪を離すと、薄暗くなってきた外に不二は鞄を持ち上げる


「そろそろ帰ろうか、名前」


白石と楽しそうに話す名前に、昔よくやったように手を差し出せば


「うん」


ふわりと微笑んだ名前は、差し出された不二の手をとった


END

(蔵ノ介くんももう帰りはるやろ?途中まで一緒に帰らへん?)

名前は僕が頂いた、という気持ちは彼女のその言葉で脆くも崩れ去った





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