「寝起きは最悪」


 

あいつは、よく裏庭で昼寝をしていた
俺はそれをずっと校舎からみてて、知っていたんだ


「やーっぱここかよ」


中学三年の冬、卒業式前のその時期に
俺は、幼なじみの名前に告白した
相手は、同級生のしかも男

男なんだけど、あいつは昔から線が細くて、綺麗だった

卒業式も近付き
告白シーズンが到来していたのも後押ししてたかもしれないけど

俺はずっと昔から、名前が好きだった
だから、あの日玉砕覚悟で告白した


「名前、俺、ずっと昔からお前の事が好きなんだ」


ふわふわとした雪の中、あいつを抱きしめ、告白した
それは学校の帰り道で、真っ暗で、二人とも制服で

普通の学生の俺で、かっこつけてもなかったけど
だけど、雪とイルミネーションは、俺を味方した


「知ってるよ、そんなの…、だって俺も、ずっとブン太の事見てたから」


今思えばいろいろと恥ずかしい
とりあえず、部員達と通行人に見られてなくて本当よかった

そんな長年の大恋愛を経て、俺達は恋人同士になった
けど、実際は前とあまり変わっていない
名前は、人を頼るのが苦手な奴で
お願いするのも苦手な奴で

俺から行動しないと、俺が名前の手を握っていないと
離れて行ってしまいそうだった


「だから、告白したのかもな…」


芝生の土手に、仰向けで眠る名前の横へ腰を下ろした丸井は
名前の顔の横へ手をつくと、その唇へ、自分の唇を近付けた

すると、二人の唇と唇が合わさる僅かに前で
名前がふわりと目を開く

まだ、眠たそうな潤んだ瞳
自分を煽るその瞳が、丸井の瞳を捕らえる
その甘美な瞳に耐え切れず
そのまま唇付けしてしまおうと丸井が体を傾ければ


「いちご…めろん…ぱん…」


その唇から放たれた言葉に、一瞬固まった


「…は?」


人の顔見て、いちごメロンパンってなんだよ…!
いちご味かメロンパン味なのか
それとも両方か?!両方なのか?!
メロンパンの中にいちごジャムでも入ってんのか?!
つか俺は一応、お前の彼氏だぞ…!?
「ブン太、好き」
ぐらい寝言で言えねぇのかこいつは…!!!

ふつふつと沸き上がる感情は、溜まりに溜まった熱望か

やばい、こいつの寝起きは最悪だった
寝ぼけた言葉をいちいち気にしてたら迷宮入りする

落ち着く様にため息をついた丸井は、ちらりと眠る名前を見て
そして、再び唇を近付けた

自分の味を残す様に、名前の味を味わう様に
深く、深く

彼氏として、これくらいは許されると思う


「とりあえず…、早く起きろよ」


END

(あー…、プリンのお化けに食べられる夢見た)





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