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真田の帽子


 


それは、午後の練習が始まる少し前のこと


「どうかしたのかい?真田」


部室の扉を開いた幸村は、眉根を寄せ唸る真田に足を止めた


「幸村、俺の帽子を知らんか?」


幸村に顔を向けた真田はいつもと少し違う
部活中はいつも必ずかぶっているそれが、今日はなかった


「あれ、そういえば今日はかぶってないね。着替えた時はかぶってたのに」

「うむ。一度部室で脱いでテーブルに置いたきり、何処かへいってしまったのだ」

「うーん。レギュラーの誰かが持って行く訳もないし…」


部室の中にはなかったらしく、コートに向かう真田に
幸村は部室に置いていたトーナメント表を取るとあとを追った


「どうかしたのですか?」


二人が並び、コートへの道を歩いていると
前から来たのは、柳生
難しい顔をしている二人に、柳生は真面目な顔で問い掛けた


「柳生、ちょっと聞きたいんだけど、真田の帽子を知らないかい?」

「部室に置いていたんだが、無くなってしまったのだ」


二人の言葉を聞き、柳生が思い浮かべた事は

仁王君が変装に使っていましたよ

でも

切原君が誤って踏ん付けてしまっていましたよ

でも

丸井君が誤ってジュースをこぼしてしまったのです

でもなかった
柳生が思い浮かべたのは、コート横ですれ違った小さな君


「ああ、あれなら今頃コートのベンチにいるはずですよ」

「「???」」


くすりと微笑んだ柳生に、真田と幸村は頭に疑問符を浮かべるばかりだったが
コートにつくと、柳生の言っていた意味がわかり、幸村はくすくすと微笑んだ


「犯人は君だったのか」

「みゃ(あ!真田!やっと来た!)」


コートのベンチにいたのは、まこと真田の帽子
真田の帽子は、まこの下敷きになっているが
ちゃんとそこにあった


「ふ、先程一生懸命運んでいましたからね」


部室に忘れてあった真田の帽子をベンチに届けたまこは
帽子をベンチに置き、しばらく真田が来るのを待っていたのだが
自主トレでもしていたのか真田はなかなかコートへ現れなかった


「まこ、それ無理じゃん?」

「はみ出しまくってるぞ」


しばらく帽子をじっと見ていたまこは、何を思ったのか帽子に手を入れ足を入れ
器用に帽子の中に丸くおさまった
帽子にもっさりとのっかるそれはまるで鉢から覗く丸いサボテンの様
自主トレを終えた丸井とジャッカルは、まこの姿に苦笑したが
よしよしと撫でるとコートへ出て行った


「すまないな」


帽子の中から見上げるまこに、真田はふと微笑むと
ふわふわとまこの頭を撫でてやった


「あれ、使わないのかい?」


それから、帽子を取らずにベンチから離れて行く真田に
幸村は問い掛けた


「今日はいい」


まあ、こんなに居心地良さそうにされたら、取り返せないよね

中学2年生以来、久しぶりにみた部活中に真田が帽子をかぶっていない姿
真田の後ろ姿を見送った幸村は、懐かしいその後ろ姿にくすりと微笑んだ


END

(なるほど、今日弦一郎が帽子をかぶっていないのは、まこが弦一郎の帽子を侵略してしまったせいか)

(勇者だなまこ、真田副部長から帽子取っちゃうなんて…!)

(まこの寝相はいつ見ても面白いのぉ)

(これって真田の帽子だったのかよ。猫は狭いところ本当好きだな)

(いつの間にかサボテンからエビ反りになってるぞ。きつくないのかこの体勢)

(猫というのは体の柔らかい生き物ですからね)


第十回拍手御礼小説









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