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紫陽花


 


ぱらりぱらりと落ちる小さな花
青、赤、白、紫

それは彼の部屋からも見える梅雨の象徴の様な日本の花


「……?」


眠っていた柳は、朝方ふわりと頬に触れたその感覚に目を覚ました
辺りはまだ薄暗く、外は雨が降っているのか雨音が聞こえる

まこが怖がるほど降ってくれるなよ

柳は体を起こし、小さく開いた雨戸から外を見た

この梅雨特有の連日続く雨のおかげか、まこは最初ほど雨を怖がらなくなった
だが、大雨や雷まで鳴り出すと話しは別で
柳の傍を離れずまるで泣き出しそうなほど怖がってしまう

早く、梅雨が過ぎればいい

柳はふと瞳を開き、まこがいるであろう布団の膨らみに触れた


「……まこ?」


膨らみに手を添えると、そこには何もなく
虚しく手が布団の中へと沈み込んだ


「…っ!!?」


ばっ!と勢いよく布団をめくるが、そこには自分の体しかなく


「まこ…!」


きょろきょろと辺りを見回せば、柳は布団に散らばったその花に気付いた


「紫陽花…?」


手の下敷きになってしまい、少し潰れたが
まだ雨に濡れている紫陽花
柳がその花をつまみ持ち上げると、雨戸がカタリと音を立てた


「みゃぁ−(あぁっ!柳起きてる!?)」


振り返り、見えたのはあの日と同じ薄紫


「まこ…」


ふるふると体を振るい、雨を落とすまこを見た柳は安心した様にほっと溜息をつくと立ち上がりまこに近付き
タオルケットでまこを包んで抱き上げた


「驚かせるな…、心臓が止まるかと思った」


ぎゅうっと抱きしめれば、まこの香りと体温が伝わる


「みー(ごめんね、柳)」

「こんなに濡れて、どこに行っていたんだ…」


ふわりと頬に触れたまこに、柳は顔を向けた


「…っ!!!」


外の明かりに見えたのは、まこが口にくわえている紫陽花


「みゃぁ−(柳、誕生日おめでとう!)」


まこが鳴くと、紫陽花は口から零れて柳の着物へとくっついた


「なるほど、これを取りに行ってたのか…だが何故…?今日はお前の嫌いな雨も降っているんだぞ?」


振り返れば、布団にも無数に散らばっている紫陽花
柳が寝ている隙に、せっせとまこが運んだのだろう
よくわからないが、柳はふわりと微笑み
濡れたまこの頬を指でなぞると、ふわりとキスをした


「…?珍しいな、今日はねこパンチが来ない」

「みゃぁ(きょ、今日は誕生日だから特別に許す!)」

「ふ、まだしてほしいのか?」


ふわりふわりと頬に触れる

柳は落ちていた紫陽花を拾い集めると机に並べ、まこを抱いたまま部屋を出て浴室へと歩いていった


END

その日が自分の誕生日だという事に気付くのは、それから少したった頃
朝食の時、家族に「誕生日おめでとう」と言われてからだった


拍手よりリクエスト頂きました
ありがとうございました!
遅くなりましたが…柳お誕生日おめでとう!!!

2011.06.29







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