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勘違い


 


柳は、毎日の自主練をかかさない
この時ばかりは、まこは家でお留守番をしています


「みゃー(お母さん、柳まだ帰ってこない?)」


柳が自主練へ出掛けると、たいていまこはリビングのソファーで柳の帰りを待っている
今日も柳が出掛けると、まこは柳の座るソファーへ上がり、丸くなっていた


「ん?どうしたの、まこ。ご飯はまだよ〜」


が、一人が寂しくなったのか、控えめにキッチンへと入り、お母さんの着物へすりーっと体を擦らせたまこ
ぐつぐつと煮える煮物を見つつ、お母さんはふわりとまこを抱き上げ胸へ抱えた
にこにこと微笑み、ふわふわと撫でる手つきは至極優しい
おとなしくお母さんと一緒にいると、続いてお姉ちゃんがキッチンへと入って来た


「お母さん、蓮二帰って来た?家のパソコンの調子が悪いから見てもらいたいんだけど」

「あらそうなの?困ったわね…、蓮二さんは自主練に行ってるはずだけど、もう帰って来る頃だからもしかして先にお風呂へ行ったのかしら?まだキッチンには来てないわよ?」

「みゃぁー(お風呂?柳お風呂入ってるの?僕も入りたい!)」


お姉ちゃんとお母さんが話していると、おとなしくしていたまこは急にもぞもぞと動き出した


「え?まこ?降りるの?」


ぽとんと腕から抜け出し床に華麗…にとは言えないが無事着地したまこ
どうしたのかと二人が見ていると、まこはトトト−!っと小走りでキッチンから出て行った


「蓮二さん帰って来たのかしら?」

「いや…、お風呂に行ったんじゃない?」



柳の家は、とっても広い日本家屋
柳のいない日に少しだけ探検をして、だいたいの場所は覚えたけど
まだまだ全部はみつくせていない

けれど、お風呂場はちゃんと分かるのです!



小さな足音がとたとたと響く廊下


「(右に曲がって、まっすぐ行って…)」


まこはお風呂場を目指して進んでいました


「みゃ(着いた!)」


柳家のお風呂は結構広く
バスタブは天然檜
まるで旅館にある温泉のような作りは、お父さんの趣味だが、まこも気に入っていた


「みゃぁー(柳ー!あけてー)」


お風呂場の扉に、ペたりとくっついた陰
ちょうどお湯につかっていた彼は、その陰に嬉しそうに微笑み、扉を開いた


「ただいま帰りました」

「あら、蓮二…さん?」

「はい?」


「みぎゃ−−−!!!(うわ−−−!!!)」


家中に響いたのは、子猫の鳴き声でした。


帰ってくるやいなや響き渡った鳴き声と、母の少し驚いた顔に
柳は直ぐさままこの声がしたお風呂場へと走り出していた


「まこ…?!」


お風呂場へ入ると、そこにいたのは父
父は心なしかしょんぼりしているが、腕に抱えられているまこには変わった様子はない


「まこが自分から入って来たんだが…、ここまで驚かれると父さんショックだぞ」


どやら先程の鳴き声は、父に驚いた声だったらしい


「どうしたの?まこがお風呂に落ちちゃったとか?!」

「あらあら、お風呂に入っていたのは蓮二さんじゃなくお父さんだったのね」


柳に続き、お風呂場へ様子を見に来たお母さんとお姉ちゃん
状況を察していたお母さんは、くすくすと微笑んだ


「蓮二さん、ついでに一緒にお風呂入っちゃいなさいな」

「え、あ、はい」

「まこは無事ね、あーよかった。じゃあ、蓮二、ご飯の後パソコン見てね」

「着替えとタオル用意しときますね」


やはり、柳家の女性は強い
父の裸も気にせず、柳が服を脱ぐのも気にせず
言い終えた二人はお風呂場から出て行った


「初めてだな、息子二人と一緒に風呂に入るのは」

「そうですね、俺とまこはよく一緒に入りますが」


ちょうどいいお湯加減
柳の肩に顔を乗せ、体を委ねているまこは
暖かさと安心感に、目を細め喉を鳴らしていた


「ふ、手のかからない弟だな」

「あとは少し太ってくれれば文句なしですね」


お風呂場に響く二人の声も心地よく、眠気を誘う
柳が撫でてくれる手つきが気持ちいい


「父さん、まこお願いします」

「そうだな、俺はもう済んでいるし、先に出よう。蓮二はゆっくりしてちゃんと体を休めなさい」

「はい」


お湯で濡れたまこは、頭以外の毛がペたりとひっつき、細さと小ささが際立っている
出て行った姿を見送った柳は、ふと微笑み自分も湯舟から上がった


END

(お父さん、これまこと蓮二にタオルと着替えね)

(ありが−っぁ…!!!)

(あっ…!コラー!まこー!!!濡れたまま行かないで−!戻ってらっしゃ−い!)

まこはたまに猫らしい動きをすることを心がけています

今日は、濡れたままお風呂場から逃走してみました
行き先はお母さんのところです。すぐ捕まります。

そんな日常


第九回拍手御礼小説









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