新聞部の取材
「テニス部の取材ですか?」
授業が終わり、幸村が部室へ向かっていると立海の生徒に呼び止められた
幸村が振り返れば、そこには一眼レフカメラを首から下げ腕に新聞部という記章を付けた三年生がいて
話しを聞くとテニス部の取材をテニス部部長である幸村へ申し込みに来たらしい
「今新聞部は部活動特集でね、今回は男子テニス部の回にしたいのよ」
とりあえず部室へ移動しミーティングルームで話しを聞く幸村
新聞部ではこれまでにも年に数回テニス部の取材で世話になっていて
部長は女性だが気さくに話せ男らしい性格な為、部員達は好印象を持っていた
「それでね、今回是非立海男子テニス部で取り入れられているアニマルセラピーも取材させて貰えないかと思って」
「え?まこをですか?」
監督や先生達の許可は既に取っているらしく、テニス部の取材はすぐに決定したが
次いで言われた言葉に幸村は少し戸惑った
確かにアニマルセラピーは立海しかやっておらず珍しいだろうが
「まこの取材か…」
顎に手を添え脚を組むと幸村は少し目を細める
見世物みたいにはしたくないんだよね…
ただでさえ立海テニス部への見学者は多い
他校も偵察に来ているし、それに
これ以上まこを他人に知られるのは面白くないんだよね…
多分、そう思うのは幸村だけではないはずだ
特に柳や赤也、仁王辺りは独占欲が強いから
幸村に共感し断固反対するだろう
「もちろんメインはテニス部のレギュラー陣よ?幸村くん達が出ると発行部数の桁が段違いなんだから!レギュラー陣には紙面を飾って貰って、アニマルセラピーの猫くんも少し出させてくれたらなぁー…なんて、どう?」
黙ってしまった幸村に、にこりと笑った部長は嬉嬉とし希望を述べた
一眼レフカメラ越しに幸村を見る部長に、幸村はちらりと目をやると腕を組む
「そうですねー…」
「残念ですがお断りします」
幸村が返事を返そうとすれば、それは背後から掛かった言葉に遮られた
新聞部部長が驚いて振り返れば、そこには扉に寄り掛かった柳がいて
腕にはきょとんとしたまこが抱かれている
どうやら話しを聞いていたらしく、いつもと変わらない冷静な顔をしている柳だが
幸村には不機嫌そうに見えて、くすくすと笑ってしまった
「みゃぁ(どうしたの柳?)」
柳の不機嫌オーラはどうやらまこにも伝わったらしい
ぴとりと柳の頬へ肉球を押し付け顔を傾けるまこに
柳はふと微笑むと新聞部部長へ顔を向けた
「テニス部の取材は受けますが、まこへの取材は一切お断りします、まこはテニス部のアニマルセラピーですが第一に俺の大切な家族です、興味本位で近付く人が増え傷付けられないとも限りませんからね」
柳はそう言うと、ミーティングルームを出て行った
残された新聞部部長は呆気にとられた顔をしていて
幸村は相変わらず微笑んでいた
「あんな柳くん初めて見たわ、今の表情は是非写真に納めたい一枚だったわね」
部屋を出る前、開眼した瞳を柔らかく細めた柳は胸元から見上げるまこの耳にふわりと唇を触れさせた
部員達から見れば、それは最近の柳なのだが
他から見れば国宝級に貴重な柳の微笑む姿だ
「まこが大切なのは俺も一緒です、柳がああ言っている以上、まこへの取材は諦めて下さい」
幸村が話しを終える様に椅子から立ち上がれば、新聞部部長は分かりましたと言う様に溜め息をついた
「紙面だけならば、頑張って交渉すれば柳もまこを載せる許可をくれるかもしれませんよ」
「幸村くんがやってくれるの?」
「まさか、頑張って下さい先輩」
「幸村くんが出来ない交渉を私が出来ると思うの?」
「ふふ、まこがいると普段とは違った俺達の表情が取れたでしょうね」
「それを撮らせる気はないんでしょう?」
ミーティングルームの机にうなだれる新聞部部長は部屋を出ようとした幸村に顔を上げると
幸村は扉の前で立ち止まり振り向いた
微かに動き紡がれた言葉に、新聞部部長は溜め息を付き苦笑する
−…もちろん…−
綺麗な唇にふと笑みをこぼし、部屋を出て行った幸村
「幸村くんのそんな表情も、初めて見たわよ」
彼女のそんな言葉は幸村へ届いたのだろうか
その後立ち上がった彼女は幸村を追う様に部屋を出て行った
END
新聞部の取材は柳の指定した日に行われた
授業が午前中で終わり午後の練習もなかったその日の朝練で写真だけ撮って貰い記事の内容にする質問等はまた後日となった取材
何故そんな微妙な日に取材日が決まったのか
アニマルセラピーがいないところを見た新聞部部長は察しがつき苦笑した
(柳くん、幸村くん、何がなんでも猫くんを写真に納めさせないつもりね…!)
まこがいないとレギュラー陣の志気が下がるが今回は朝練からやる気漲るレギュラー達
今までは面倒くさそうにしていた取材も笑顔で答え
生き生きとした部活写真が撮れた原因は
(まこ−!久しぶりだな−!元気だったか?)
(朝いなかっただけだろう)
前日に言った柳の言葉のおかげかもしれない
(明日は新聞部の取材がある為まこを休ませるが、取材を真面目に受けると約束するなら午後から俺の家に遊びに来てもいいぞ)
写真をふんだんに載せられたテニス部特集の新聞は予想以上の発行部数を記録したらしい
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アンケートよりリクエスト頂きました
ありがとうございました
第六回拍手御礼小説