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部活中のベンチ


 


まこが立海のテニス部に来てからというもの、部活中は結構賑やかになった

もともと真田の喝が響いてそれなりに賑やかだったが
今はそれにプラスされ違った賑やかさがある


「仁王君、次は君の番ですよ!何時までそこに座っている気ですか!」


春風が吹くも、まだ寒さの残るその日
立海テニス部は相変わらずテニスコートで午後の練習を行っていた

各自コートに入って練習をしている中
試合組の仁王がベンチに胡座をかいて座っていれば
コートから柳生が歩いてくる
その姿は、寒い気温に似合わないが
スポーツをするには最適の半袖に半ズボン姿で
仁王は寒そうに顔を顰めた


「なんじゃ、こんな寒いのに半袖半ズボンになれ言うんか?鬼じゃな、柳生は」

「今は部活中ですよ…!動いたら温まります!」


ベンチに来た柳生は仁王の隣に置いていた自分の上着に腕を通しつつ
眉間にシワを寄せて仁王に顔を向ける
どうやら次は、柳生と仁王が交代らしい
仁王の相手はジャッカルで、彼は既にコートに入っていた

そんな事は気にしない仁王は
ベンチの前で上着をきちんと着る柳生にそのままの体勢でにやりと微笑む


「柳生、俺の状況分かるじゃろ?」


仁王が動きたくないのは寒い事もあるが
なにもテニスがしたくない訳ではない
その理由は…、仁王の股の隙間に小さく丸まっている子猫にあった


「みゃー(うう、柳生…、寒い)」


にやりと微笑む仁王に、柳生は仁王の脚に目を落とす
そこには身を丸めて仁王と誰かの上着で暖をとっているまこの姿があった


「猫用のベッドを出すべきでしたね」


寒いところが苦手な猫
きっと、仁王の股の隙間には
柳が持ってきていた猫用サイズの毛布が敷かれているだろうが
誰かの上着がまこにかけられている為真相は分からない

上着は多分、真田君の物だろう

柳生は溜息をつき、寒そうなまこの頭をふわりと撫でた


「俺、今まこの風よけ係じゃけ、動けん」


ベンチの背もたれに肘をつきにやりと微笑む仁王は
なんともふてぶてしい…が


「ええ、変わりは私がしっかり勤めておきますよ」


そんな仁王には既に慣れている柳生は無理矢理笑顔を作り
仁王の股の隙間と上着の間から顔を出すまこをそのまま抱き上げ
自分の上着の中へと抱き入れた


「ここならば私もまこも温まりますし、一石二鳥、さあ、貴方は早くコートに行って下さい」


いきなりの移動にまこはきょとんとするが
さっきまでテニスをしていた柳生は温かく居心地もいい為
少しもぞもぞと動いていたがすぐに落ち着いた


「みゃぁー(柳生、あったかいね)」

「ん?毛布も必要ですか?」


胸元から見上げて来るまこにふわりと微笑みつつ柳生が顔を近づければ
柳生の唇が、パタパタと動くまこの耳に触れる

片手で器用に長ズボンをはく柳生に
やられたというように小さく溜息を漏らした仁王は
ベンチから立ち上がって上着だけを脱ぎ
少し体を動かすと、柳生の上着から顔だけを出すまこの頬に手をそえて
ふわりとまこの頬にキスをした



END

(仁王君…、貴方って人は)

(柳生は冷たいけん、あったまらんぜよ、俺が戻って来るの待っときんしゃい)

(私は仁王君よりも温かい自信はありますよ?ほら、貴方はジャッカル君を温めに早くコートへ行きなさい)

(はぁ…、ジャッカル温めてもなんも可愛くないぜよ)


君のおかげで、ベンチは賑やかですよ

第三回拍手御礼小説








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