いつかこんな日が来ることを
*シルビオ猫ED後の話です。
春の穏やかな日差しの中、シルビオは眠っていた。
いつかわたしが彼にプレゼントした、あのマフラーの上に蹲って。
「シルビオ、もう御飯にしない?」
ずっと傍に寄り添ってその小さな身体を撫でていた手が、疲れて痛くなってくる。
シルビオは目を覚まさない。
窓から差し込む日差しを浴びて丸くなるその姿は、“もう少し”、そう言っているようだった。
「……そうよね、今日は、とっても……気持ちが良いものね」
ゴロゴロと喉を鳴らさないのは、眠っている証拠。
長い長い間一緒にいるから、シルビオのことはもう何だってわかる。
彼の言いたいこと、好きな場所、食べたいもの。
そう、何だって……。
撫で続けていた手を止めると、涙がこぼれた。
「……シルビオ」
南向きの暖かいこの場所が好きだったこと。
お肉に鼻を鳴らすときはシチューを食べたがっているということ。
頬を舌先で優しく舐めるときは、“あいしてる”と言ってくれていること。
そう、わたしたちに言葉は要らない。
大丈夫、わたし、選んだこの道を後悔なんてしていないから。
「……おやすみ、なさい」
寝息を立てなくなったその小さく冷たい身体を、春の日差しは穏やかに照らし続けた。
いつかこんな日が来ることを
(10年前に、覚悟したはずだったけれど)
(12.1.1)
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シルビオの猫エンドは、ハッピーなはずなのに泣いたなあ……。
寿命の違いは辛いです。
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