マーメイドプリンス




「本当に……お前と出会えたことは『運命』だと思わずにいられない」


真斗がわたしの手を握り、情熱的に囁いた。
彼は自分のことを騎士だというけれど、その様はまさしく王子様のようだった。
そしてそんな王子様に愛されるわたしは、お姫様。

彼は言う。
雪の日に弾き語りをしていたわたしに会ったことがあると。
わたしの歌に救われたのだと。
わたしの言葉に夢を持ち、前を向くことが出来たのだと。
そんなわたしと出会えたこと、再会できたこと、それは『運命』なのだと。
だけど、それは真斗から見た運命。

残念ながらわたしに、真斗がいうような記憶は無い。

雪の中弾き語りをしたことなんてないし、真斗と出会ったことは一度も無い。
真斗は、わたしと誰かを勘違いしている。
だけどわたしからしてみれば、あなたが勘違いしてくれたことこそが『運命』だった。

わたしは真斗の手を強く握り返し、微笑んだ。


「わたしも、『運命』だと思う」


……あなたは一生、気づかなくて良い。
人魚姫の存在なんて。




マーメイドプリンス
(あなたを救ったのはわたし)
(11.10.12)
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真斗ルートパラレルです。
春歌ちゃんと髪の色が一緒で、作る音楽も素晴らしかったヒロインのことを春歌ちゃんだと勘違いしてる真斗さま……という設定。
春歌ちゃんはというと、早乙女学園に受験失敗して今頃普通の高校で平和に過ごしていることでしょう。


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