ダークサイドウエディング




その健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、真心を尽くすことを誓いますか?
……誓います。
ねえ、グラム。
グラムも、誓ってくれるよね。


「……さす、け?」
「うん、大丈夫だよ、グラム」


抱き寄せた花嫁の腰は、驚くほどに細い。
少し前まで、城下で評判の甘味所で働いていたこの体。
有り余る欲をただぶつけたかった時も、任務で疲れ癒しを求めた時も、俺を包み込んでくれた。
愛おしい体。
俺はこの体に愛を誓おう、健やかなる時も病める時も。


「あの……、これ、は……」
「一言……“誓います”って、それだけでいいから」


口付けは、誓いの後。
だから、もう少しだけお預け。
その可愛い唇が誓いの言葉を口にするまで、少しの我慢。
コツンと額と額とをぶつけると、その綺麗な瞳と間近に目が合った。
そこには、当たり前に俺が映っている。
その顔は時に喜び、時に悲しんだ。
忍として生きてきた俺が、この瞳の中でだけは、感情を素直にさらけ出せる。
今映っている俺は……言いようのないほど、幸福そうな顔をしていた。


「ねえ、グラム。言って?」
「……」
「誓いますって……言って?」


俺は今日、グラムと結婚する。
薄暗く湿ったこの地下は、とても愛を誓うような神聖な場ではないけれど。
だけど、グラムを、愛を、つなぎとめることは十分出来る。
可愛い花嫁を、自分の城に囲って、自分だけのものにする。
それが、俺にとっての結婚。

俺は、真田の旦那とは違う。
忍として生れ落ちた時点で、本来の正当な意味の結婚という道は絶たれた。
家族を持つことはない。

だから、いいだろう?

少しくらい汚い方法で、好きな人を繋ぎ止めておいたって。
少しくらい……彼女の自由も、奪ってやるくらい。

肩を抱く力を少し弱め、間を空ける。

誓わないなら、俺が誓わせてあげる。
さあ、手を差し出して。
指輪よりも、ずっと拘束力のある、愛をあげる。




ダークサイドウエディング
(グラムに似合う手枷、選んできたんだ)
(11.08.24)
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花嫁は絶賛マリッジブルー(^0^)
ちなみに誓いの言葉はウィキペディア様より。
結婚が西洋式……書き終わってから違和感に気がつきました(^0^)



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