今は友情でも構わない
「あ……、バル、レル……」
目の前の人間はもはや声も出せないというように驚いていたが、かろうじてオレの名前を呼んだ。
いや、呼んだというよりは確認したかったのかもしれない。
オレが、自分の知っている“バルレル”であるか否かを。
見上げなれていたこいつの顔を見下ろす気分は、まあ悪くない。
「バルレル……なの、よね?」
「他に誰だったら納得するんだよ」
「い、いいえ。バルレルだわ」
強力な魔力を持ってしてこいつに召喚されたオレは、誓約に縛られ子どもの姿をしていた。
だから誓約を解除されれば、オレが元の姿に戻るのは自然なことで。
だが、困惑するのも当然か。
いかにも悪魔を思わせる4本の角に、凶器のように鋭利な爪、体中に刻まれた紋様、そして額に存在する第三の目……。
ガキの頃のオレの容姿とは、さすがにかけ離れている自覚はある。
まあ紋様や額の目はガキの頃からあったが、こいつの目に晒すのは今が初めてなわけだ。
オレの本来の姿を見て、こいつは今、何を考えているのか。
「あ、そうだわ。驚いてお礼を言うのを忘れてた。……助けてくれてありがとね、バルレル」
「は……?」
思わずマヌケな声が出た。
何か思いついたように口を開いたかと思えば、これか。
全く、こいつは素っ頓狂というか能天気というか……。
「は?じゃないわよ。バルレルがいてくれなかったら、わたし死んでたわ」
それにしても……、と呟きながら、グラムは地面に横たわる屍人を飛び越えて、オレと距離を詰める。
じーっと覗き込んでくる瞳は、額の第三の目と視線を交わす。
「バルレルって、三つ目だったのね」
「まあな」
「あ!もしかして、オデコにバンド巻いてたのって……」
「別に隠してたわけじゃねぇぞ」
遮るように言ってやれば、ふーん、と特に興味もなさそうな返事が返ってくる。
そして何を思ったのか、こいつはにっこり笑って。
「かっこいいじゃん」
「な……っ」
オレの予想だにしなかった言葉を吐いた。
「うんうん。似合ってるよ」
一人で納得したように何度も頷いて、満足げに笑う。
そうか、お前は。
オレのこの姿を目を見て、怯えるでもなく蔑むでもなく、まして跪くこともなく、あくまで対等の友であるというのか。
オレの口元にも、自然と笑みが浮かんだ。
「バーカ」
「なっ、何よ!せっかく褒めてやってんのに!相変わらず生意気ね」
「テメーの方が年下だって言ってんだろ」
いつものように文句を言い合いながら、笑い合いながら、オレ達はどちらからともなく歩き出した。
子どもの姿であっても、大人の姿であっても、関係ない。
いや、こいつの前でなら、人間だとか魔王だとかいろんなものが関係なくなる。
「それでもやっぱり、バルレルはバルレルだわ」
大切なのは、こいつと、オレであること。
いつしか“友”という間柄に満足できなくなるであろうことを感じながら、今はただ、この心地よい人間と共に在りたかった。
今は友情でも構わない
(いつかは全て、オレに捧げさせる)
(11.02.23)
――――――――
語りの口調に若干の違和感。
プレイしてから時間たつと、喋り方とか設定とか忘れちゃいがちですよネー。
特に一人称があやうい。
バルレルは「俺様」だっけ……?(^p^;;)
そろそろ原作をプレイしなおさなくちゃです。
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