悲しみの波に乗る




ここにはもう、誰もいない。

わたしとピカチュウ、二人だけ。
みんな、どこかへ行ってしまった。
ずっと一緒に旅した仲間も、バトルタワーに登った仲間も。
青い電波に乗って、みんな、みんな。


「……ピカチュウ、二人きりだね」
「ぴぃか」


みんな、わたしのことは忘れてしまう。
一緒にポケスロンで遊んだことも、アクア号に乗ったことも。
全部、全部、思い出にされてしまう。
新しい誰かのもとで暮らし、もう二度と戻ってくることはない。
全部、全部、なかったことに。
タマゴから孵った時に、一番初めにそばにいたのがわたしだったということ以外、全部。
全部忘れて、幸せに……。


「ピカチュウは……ずっと一緒だね」
「……ぴぃか?」


黄色い小さなその身体を、抱きしめる。
それは確かに暖かくて、安心できた。
だからわたしは、寂しくないよ。
みんなに忘れられたって、寂しく、ないから。

わたしはこの場所でしか生きれない。
みんなのところへは行けないよ。
ピカチュウあなたもそうだよね。
だからずっと、一緒にいよう。
みんなに忘れられたこの場所で、二人。




悲しみの波に乗る
(ねえピカチュウ、今日はどこに行こうか)
(11.08.04)
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ポケモン新しいロムに移すとき、いつも考えます。
それにしても今回アイテム移せないのは不便でござる。



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