ノートの賢い使い方




「ねえ、リューク」
「何だ?」


偶然拾った黒いノート。
ここに名前を書くと、みんな死ぬ。
恐ろしい、だけどとても魅力的なノート。
そんなノートについていた死神。
わたしの味方というわけではなく、かといって非協力的なばかりでもない。
よくわからない死神。


「リュークは、わたしのために死んではくれないの?」
「くれないな」


ベッドに寝転がり、ノートを高くかざす。


「なーんだ、そっか」


以前、聞いたことがあった。
人間に恋をした、死神のお話。
死神は人間の寿命を延ばすためにノートを使ったら死んじゃうんだって。
その恋した死神さんは、死んじゃったんだって。


「わたしのこと、好きなのに?」
「自分が死ぬほどじゃない」
「うっわ、薄情〜」


素敵なお話だけど、滑稽なお話。
だって、人間はいつか死ぬのに。
ノートに名前さえ書いていれば半永久的に生きられる、死神とは違う。
永遠に生かしておくことなんて出来ないのに、その命を助ける為に死ぬなんて。
きっと恐らく、リュークも似たような考え。
どんなことがあったって、わたしのために命は捨てない。

でも逆に言えば、わたしが死ぬときまで、リュークは必ず生きている。
最後まで、いてくれる。


「そんなことばっか言ってると、リュークの名前書くよ?」
「書いても効果ないぞ」
「わかってるわよ」


ノートを広げて、ペンを持った。
ゴリゴリと線を描いていく。
こう……あごは尖っていて、頭も尖ってて、目はギョロギョロで……。


「何してる」
「リュークの似顔絵かいてる」


世間にとってどんなに価値のあるノートでも、わたしにとっては落書き帳。
このノートで人を殺したことなんてない。
リュークは退屈なんて嫌いだといつも言う。
だけどリュークは、わたしの傍にいた。
それがなんだか嬉しかった。


「……似てるか?」
「似てないね」


ノートを本来の目的に使ったら、負けな気がする。
ノートを使わず、リュークにとって退屈な状態で、それでも傍にいてくれるのが重要なんだと思った。
だからわたしは、あえてノートに名前は書かない。

これがわたしの、ノートの使い方。




ノートの賢い使い方
(最期まで、そばにいてよね)
(11.08.03)
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そして最期にはリュークに名前を書いてもらえたら幸せでしょうね。


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