残酷さを知る日もそう遠くない




おいら達はずっと、ラグズの奴隷解放を訴えてきた。
それが念願かなって今日、神使に承諾してもらえたんだ。
これで少なくともベグニオン内で、ラグズが虐げられることはない。
嬉しくて嬉しくて、おいらは一番に報告したい人のもとへ全力で走った。


「グラムーっ!」


減速しないまま勢いよく抱きつけば、グラムは小さく悲鳴を上げる。
買い物籠が手から落ちたことにも、きっと気づいていない。
その細い身体を、力いっぱいぎゅーっと抱きしめた。


「グラム、ついにラグズの奴隷解放が決まったんだ!」
「えっ、……ほんと!?」


その柔らかい頬っぺたに摺り寄ると、グラムはくすぐったそうに笑った。
後ろから、ムワリムとビーゼが追いついてくる。
やっぱり化身してない状態だと、おいらの足が一番速い。

追いつくなりムワリムは、抱き合うおいらとグラムを見て眉をひそめた。


「坊ちゃん」
「何だよ、ムワリム」
「喜びを分かち合うのは結構ですが……グラムさんには、婚約者がおられるのですよ」


そう言って、少しだけ悲しそうな顔をしたムワリム。
そう、グラムはもうすぐ結婚する。
グラムの左手の薬指に、綺麗な指輪がはめられていることも、おいらは知ってる。
知っていて、一層強く、抱きしめた。


「いーんだよ!これは、“友達”のハグだからな」


そう言って、また頬に擦り寄ると、グラムの匂いが鼻を掠めた。
ついつい笑顔になって、安らいでしまう香り。
おいらの、大好きな香り。
かすかに知らない匂いが混ざっていることには、目を瞑る。


「ふふ、おめでとう、トパック」


おいら、知ってる。
“友達”って言葉を使えば、何だって許されるんだ。




残酷さを知る日もそう遠くない
(グラム、グラム……)
(10.10.04)
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そしてこの話がトパックである必要性\(^0^)/


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