男でも女でも人間でも悪魔でも




女になんて、興味は無かった。

そもそも零体に男も女もあってないようなものだし、生殖機能も無い。
変わるとすれば喋り方とか体系ぐらいの違いで、ニンゲンのように区別しなくてはならない理由も無い。
俺だって、ただ自分が女だっていうのは気持ち悪くて嫌だったから男なだけ。
それは楽でよかったし、特に興味も無い俺にとっては、そんなのなんだってよかった。


「だーっ、暑い!」


しかし目の前のコイツは、ニンゲンであり女であるにもかかわらず、全くといっていいほどにそれを感じさせない。
ニンゲンの女ってのは、種族を繁栄させるために本能的に男を誘うものなんじゃねえのか。
外見も着飾って、媚びるような声を出すものなんじゃねえのか。
それが正常な女だとしたら、コイツはニンゲンとして明らかに欠陥品だろう。


「もー信じらんないくらい暑い!バルレルは暑くないわけ?」


暑さで極限まで脱いで露出しているのに、この色気の無さ。
コイツの肌を見ていて何も感じないのは、俺が零体だからか?
いいや、そんなことはねえだろうけど。
だけど仮に、これがアメルだったとしてだ。
だったら俺は、何かを感じるか?


「感じねえ……よな」


どうやら色気のあるなしではないらしい。
スタイルのよさも関係ない。
じゃあやっぱり、俺がこいつらと違う存在だからなのか。


「感じないとか……!やっぱ悪魔って涼しいの?」


ぺたり、グラムが俺の体を触る。


「あ!」


完全に不意打ちだった。
グラムは、嬉しそうに笑顔になる。


「ほんとだ!ちょっと冷たい!」


そう言って思いっきり抱きついてきたグラムの体には、ニンゲンの体温があった。
押し当てられた柔らかい感触は、微々たる物だが、胸だろう。
限りなく接近した顔は暑さで少し上気していて、耳には吐息がかかる。
足まですがりつくように抱きつかれれば、もう、俺は手も足も出ない。


「おい……ニンゲン……」


色気なんて、ないくせに。
胸だってろくになくて、だらしなくて、がさつなくせに。

なんで俺は、こんなに……。


「バルレル冷たくて気持ちいい!だいすき!」


女になんて、興味は無い。
だけど目の前のコイツは、女だが、少し興味がある。




男でも女でも人間でも悪魔でも
(きっと何だって、俺は、コイツを……)
(11.07.18)


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