包み紙なら捨ててしまった
大事に大事に噛み締めて、恐る恐る膨らませた風船ガム。
ゆっくりと膨らんでいくその姿を見守るのが幸せで、だけど同時に、心のどこかでは割れる瞬間を望んでもいた。
だけど、だけど。
「……グラム」
どこからかきた誰かさんに、パチン。
僕は、先を越されてしまった。
その音はとてもあっけなく、また人が逆上する瞬間の音によく似ていた。
「ナッ、ティ……?」
割られてしまった、僕の風船ガム。
まさか誰かに割られてしまうなんて想像もしていなかった僕は、なすすべもなくそれを見つめた。
そして、逆上する。
「ねえ、グラム、グラム、グラムグラム」
「っひ!……やぁっ」
大好きな、だいすきなグラム。
僕の彼女。
そう、誰かさんの彼女ではなく、僕の彼女。
だけど僕より先に風船ガムを割ったのは、誰かさん。
大切に大切に膨らませた、幸せなグラムとの関係。
いつかその全てを僕のものにしたかった。
それはなんだか怖くもあって、だけど絶対に渇望していたんだ。
なのに、なのに。
僕が奪う前に、誰かさんに奪われた。
風船ガムは、割れてしまった。
「ごめん、なさい……っ、ごめんなさい」
割れる瞬間が恐ろしかったのは、きっと割るだけでは収まりそうもないから。
きっと他の人がするように、割ってまた噛んで膨らませてなんて、僕にはできないだろうから。
きっと僕なら、一度割ってしまったら、そのまま飲み込んでしまうだろうから。
グラムの全てを、グラムの全てを。
「謝っても許さない」
ガブリ。
喉元に噛み付けば、甘い味。
ああ、我慢していたのに。
その唇を一度吸ってしまったら、その肌を一度舐めてしまったら、噛み付いてしまったら。
ああ、やっぱり。
一度割ってしまったら、きっと我慢できなくて食べてしまう。
だって、愛おしい貴女は、こんなにも甘いのだから。
包み紙なら捨ててしまった
(だから食べてもいいよね!)
(11.06.21)
――――――――
風船ガムを割る=セックスです。
グラムさんはきっと浮気をしてしまったんでしょうね。
そして恐らくナッティは、その割られてしまったガムを膨らましなおすことも、捨てることもできないのです。
レッツ カニバリズム!^^
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