それは革命の朝の出来事




今日はなぜだかやけにすっきりと目が覚めた。
鳥が鳴いたわけでも、雨音がしたわけでもない。
なんともいえない、微妙な天気。
だけど、そんな天気は嫌いじゃない。

散歩でもしようかしら。
ああ、でも、レインくらいには了解を取る必要があるわね。
じゃあ、レインを探しに行きましょう。
もしかすると、運がよければ、一緒にお散歩できたりするかもしれないわ。

部屋を出て、右に曲がる。
すると、いとも簡単に見つかったその背中に嬉しくって走り寄った。


「レイン!」
「うわ!……グラムくん?」


彼は驚いて、だけどすぐにいつもの笑顔になった。


「どうかしましたかー?」
「お散歩にね、行こうと思って」


そう告げると、彼は一瞬、無表情になる。
ああ、世渡り上手で人一倍要領が良い彼が、たまに見せる無遠慮な顔。
その表情は、他者を寄せ付けないほどに冷たい。
このときばかりは、いつもそうだけど、いつにも増して何を考えているのかわからない。
しかしその表情も一瞬で、レインはすぐにもとの笑顔に戻った。


「いいですよー、いってらっしゃい」
「え?」


基本的にCLOCKZEROの規則には緩い彼だが、ここまで放任的な返事は初めてだった。
不思議に思って、レインの顔を覗き込む。
だけど、その完璧なまでの笑顔からは、何も読み取ることが出来なかった。

……変なの。


「……残念ながら、僕は、ついていけません」


でもまあ良いか、そう思ってレインに背を向けて歩き出そうとしたとき、後ろから小さな声が聞こえた。
小さかったけれど、確かに聞こえた。
レインの、静かな声。


「遠くへ……できるだけ遠くへ、行くと良いと思います」
「……?」


振り返ると、そこにはいつもと違う笑みを浮かべるレインがいた。
彼の本来の歳相応と言える、落ち着いた大人の笑み。
だけど、どこか早くに全てを諦めてしまった子どものような笑み。
わたしは何も返すことができず、歩き出した。

胸騒ぎがする。

この胸騒ぎの原因を、わたしは彼の助言したとおり、CLOCKZEROから遠い場所で知ることになる。




それは革命の朝の出来事
(どうか泣かないで、なんてね)
(11.07.20)


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