この犬に至高の褒美を




俺は犬だった。

忠実な僕のことをそう呼ぶことがあるが、それとはまた少し違う。
俺は、姫だけの犬。
人権なんてまるで千切り捨てられた、ただただ命令に跪く犬。
姫がやれというのなら、何だってやってみせる。
しかしそこにはいつだって自分の意思があり、俺は自ら姫を求めていた。

薄暗い部屋、ぴちゃぴちゃと響く淫靡な水音。
開かれた姫の脚の間に顔を寄せ、俺は舌を出す。


「……ぁん、きもち、い」


姫は節操も世間体も何もかも放り出して、俺の頭を自らの股に手繰り寄せ喘ぐ。
俺はそんな姫が悦ぶように、何度も何度も教え込まれた姫のいいところを舌でなぞった。

味も、匂いも、色も、何もかも。
姫のいやらしいところ全てが、俺に刻まれる。

自然に勃ち上がる自身の欲望をどうすることもできず、這い蹲ったまま床にこすりつけた。
そんな俺の勝手な行動を、姫はさげすんだ目で見た。
ああ、また犬が欲情したのかと。


「こたろ……、変態、なのね」
「……っ、」


自分は忍に陰部を舐めることを強要しておいて、酷い言い分だ。
だけど、これは絶対服従である“飼い主”と“犬”の性。
どんなに理不尽な責めも、犬は甘んじて受けなければならない。

姫は掴んでいた俺の髪から手を離すと、くすりと笑んだ。

……この笑顔は、心底機嫌がいいときの笑顔。
もしかすると、今日は最後までいけるかもしれない。

そう少し期待しただけで、自身の先からはだらしなく透明な液が垂れ出た。


「ふふ……舐めて、感じてしまった?」
「……、」
「くす、そうだったわ、小太郎は喋ることができないのよね」


姫は俺の愛撫を一旦制し、俺の口内に指を突っ込んだ。
もう何もかも教え込まれた俺の身体は正直で、何も言われなくともその細い指を舌で愛撫した。

くすり、また姫が笑う。

ゆっくりと姫の顔が近づいてきて、どきりと心臓が忙しなく跳ねた。


「わたしを愛撫するためだけにある、いやらしい舌」


その笑みの、なんて黒いことだろう。
俺は吸い込まれるように、夢中で姫の指をしゃぶった。
そんな俺を、姫はやはり見下すように、だけど楽しそうに見つめる。

犬は、ただ飼い主のためだけに。

みっともなく尾を振る俺は、やはり正真正銘の犬なのだなと思った。




この犬に至高の褒美を
(ああ、姫の中に入りたい)
(11.07.26)


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