鈍感は罪










「でね、せんせ。」
「おー。」

 僕のベッドに腰かける先生と向き合うように先生の膝の上に跨る。

「好きなんだ。」
「俺もヒデの事好きだぞー。」
「違う、せんせ、そういう意味じゃなくて。」

 先生ってば本当鈍い。

 何度も何度もアタックしてるのに、返事どころか気付いてさえくれない。

 今だって、必死にお色気攻撃してるつもりなのに…。

「ねぇ、せんせ…。」
「ヒデ、まだ課題終わって無いぞ?先生と遊ぶのは課題終わってからな。」

 先生は僕を軽々と抱き上げると、勉強机まで運んで僕を座らせた。

「分からない所があったら聞けよ?でもまずはちゃんと自分で考えるんだぞー。」

 そう言って先生は再び僕のベッドに腰かけて、そこら辺に置いてあった漫画を読み始めた。
 
 
 
 先生、ホントに分かってない。
 
 






 
***






 
 
 
「初めましてー。今日から君の家庭教師です朝田ですー。」

 見た瞬間好きになった。だってちょーカッコいいんだもん。

 やる気の無さそうな声とは合わない爽やかな顔立ち。あれだよ、いけめんってやつ。
 スラッと伸びた足に薄い色のジーンズが良く似合ってた。

 これが先生の第一印象。

 最初は見た目で好きになったけど、接していく内に性格も好きになった。

 ちょっとゆるーい性格。たまに意地悪してくるけど、基本面倒見の良いお兄ちゃん。そんな感じ。

 だけど、鈍かった。とにかく鈍かった。
 
 
 
 
 家庭教師って、そーゆーのが目的でなる人も多いって聞いたから、運が良ければもしかして…って思ってたんだけど…。

 そーゆーのってのは、その、つまり、教え子とごにょごにょ……は、恥ずかしくてそれは言えないけどっ!

 とにかく、そういう人だったらいいなぁってちょっと期待してた訳で。

 だけど世の中そんなに甘くないっていうか。思い通りにはなかなかいかないっていうか。

 見た目ばっちり性格ばっちりなんだけど、そっちの趣味は無かったみたい。
 ぜんぜん普通に家庭教師のバイトしてるだけだった。

「はぁー…」

 先生気付いてくれないかなー。

「どうしたー?なんか分からない問題でもあるか?」
「だいじょぶ…。」

 ホントは家庭教師なんていらない。
 中学受験って言ったって僕が目指してる学校はそんなに難しい訳じゃないし、僕だってそんなに成績が酷い訳じゃない。自分で勉強すれば十分。

 それでも先生にずっと勉強見てもらってるのは、先生の事が好きだから。
 先生にも僕の事好きになって欲しかったから。

 こーんなに先生にアタックしてるのに、気付いてくれないなんて…。

「はぁー…」

 二度目の溜息。

「…どうしたヒデ?何か悩み事か?先生で良かったら話聞くぞ。」

 先生は隣にかがんで僕の顔を覗き込んだ。

「すき。」
「ん?」
「…だからっ…せんせのこと好きなんだってばぁ!」

 そう言って先生にキスをした。キスって言っても、ホントにちょっとだけ触れるだけ、1秒も無いくらい短いやつだけど。
 でもそれだけで僕の心臓はすごくバクバクしていた。口から飛び出るんじゃないかって思うくらい。

 先生は呆気にとられた顔で僕の事を見ていた。
 嫌われたらどうしよう…。…気持ち悪いと思うよね…だって先生はそういう趣味ないんだもん…。

「ヒデ…」

 先生の声に体が強張る。次に何を言われるのかが怖かった。

「ヒデ、お前…ちゅーしたいくらい先生の事好きだったのかぁー?」
「へっ?」

 先生の言葉に驚いて先生の事を見ると、先生は僕のほっぺにキスしてきた。夢みたいな展開にどうしていいか戸惑う。

「えっ、えっ?せんせっ?」
「俺も大好きだぞーヒデぇー。」

 何度もほっぺにキスされる。うそうそ、どうしよう、もしかして両思い!?あんなにアタックして何にも反応しなかったのに…。

「せんせぇ…」

 うっとりとした目で先生の事を見つめると、先生は僕のおでこにキスをした。

「ヒデ可愛いなー。」

 
 
 





 
 そしてほっぺとかおでこにちゅっちゅされ続ける事5分。
 
 
 
 
 





 
 …ち、違う…。

「ヒデかわいー。」

 先生は僕のほっぺに軽ーくキスしたりしながら僕の勉強を見ていた。

 ち、違うぞ…。
 これは…、この"好き"は…何か違う…。

 たまに頭もわしゃわしゃってされる。

 嬉しい。すんごく嬉しいんだけど…違うっ!
 この…先生の僕の扱いは…恋愛とかそーゆーのじゃなくて…。

 これは、そう、さながら……赤ちゃんに対して思わずチューしたくなるのと同じ感じの扱い…!

「せんせぇ。」
「んー?」
「せんせ、僕の事好き?」
「好きだよ。弟みたいだ。俺もヒデと同じ1人っこだからなー。…なんならお兄ちゃんってよんでもいいぞ?」
「や、いいや…。」

 やっぱり、そんな風にしか思われてなかった。

 っていうかどうなの。キスまでされて気付かないってどうなの。
 もう鈍いとかそんなレベルじゃないよ…。
 
 
 
 
 
 
 先生のばかっ……って口に出す事も出来ずに、僕は先生に抱き締められたりキスされながら、今日も鉛筆を握って机に向かっています。







-END-






ホントこれは鈍感のレベル超えてるよ先生。






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