振り向いてくれるまで










「…なにジロジロ見てんだよ。」
「え?あ、いや、可愛いなぁって思って。」



 ブハッ!



 俺は口に含んでいたコーラを盛大に吹き出してしまった。

「な、何言ってんだ変態っ!」

 口を拭いながら五十嵐をキッと睨みつける。五十嵐はそんな俺を見ながらニコニコ笑っていた。

「変な事言うからむせちゃっただろ!」
「えぇ?でも俺真面目に言ったのに。」

 喉元を逆流しかけた二度目は頑張って抑えた。

「ばか!あほ!ド変態っ!」

 俺は精一杯の文句を投げつけたが、五十嵐はまるで効いてなかった。

「前から言ってるけどさ慎吾、俺と付き合おうよ。」
「誰が付き合うか!てかまず俺達男同士だろが!」
「関係ないじゃん。」
「っつーか例え俺が女でもお前とは死んでもごめんだね!」
「そんなに…?」

 五十嵐はいじけたような、拗ねたような声をあげた。

「あ…いや、まぁ、それは言い過ぎたかもしれないけど」
「じゃあいいじゃん!」

 五十嵐は目をキラキラさせて近づいてきた。さっきの拗ねてたのは何処に行ったんだ。

「い・や・だ!」
「ケチ!」
「はぁっ!?」

 五十嵐はほっぺをぷくっと膨らませた。

 …ガキかっ

「…じゃあとりあえずチーズバーガーおごってよ。」
「え、やだ。」
「お前も十分ケチだ。」
「それとこれは話が別なの!」
「はいはい。」

 俺はスタスタと早歩きで進む。五十嵐は後ろから大股でついてくる。


「じゃあ一回えっち「しねぇよ!」


 なんなんだコイツ…。

 あー…誰か助けて…。



 五十嵐の意味不明な猛アタックを背中に受けながら、俺はどうやって五十嵐を黙らそうか必死に考えていた。

「じゃあチューは?チューは?」

 五十嵐の声だけが辺りに木霊していた。






-END-






こいつみたいに自分の気持ちを素直に言えたら楽だろうに。





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