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俺と君の距離
「おりゃっ、どうだっ、このっ」
「わっちょっ、ストップストッ…あー…。」
俺はコントローラーを床に置いた。ちくしょう、まだ大輝に一回も勝ってない。
「へっへー、まだまだ俺が強いね。」
大輝は自慢気にガッツポーズしていた。
俺は大輝の家に泊まっていた。大輝の親は仕事で帰ってこれないから騒ぎ放題だ。だから、新しく買ったゲーム持ってきたんだけど、どうしても大輝に勝てない。俺のゲームなのに。
「うるさい!もう一回だ!!」
そう言って俺はコントローラーを握る。2人しかいない部屋に俺の声は虚しく響いた。
本当は5、6人で大輝の家に泊まるつもりだった。でも、みんなそれぞれ都合が悪くなって、結局俺だけになった。
普通なら、盛り上がりに欠けるとかつまらないとか思うかもしれないけど、俺は正直嬉しかった。
俺は大輝の事が好きだ。
あのあどけない顔、白い肌、ちょっとイタズラ好きな性格。
全部全部好き。
だから、2人きりのこの状況は正直嬉しい。完全に片思いだけど、好きな人とずっと居れるのは幸せだった。
「隙ありっ!」
大輝に見とれていると、大輝は俺のキャラクターをボコボコにしていた。しまった、また負けた。
「何ぼーっとしてんだよ、眠いの?」
「ん…いや…。」
「…もう夜中の3時だし、寝よっか。」
そう言って大輝は布団を敷き始めた。
俺は正直大輝ともっと色々話とかしたかったけど、大輝が寝るって言うならどうにもできない。
俺もしぶしぶ一緒に布団の準備をした。
気持ちは元気でも体はやっぱり疲れていたらしい。布団に入って大輝と話そうと思っていたけど、そんな事をする間もなく俺は眠りに落ちてしまった。
***
チチ、チチチ―…
鳥の鳴き声で目が覚めた。窓からは明るい光が入り込んでいる。今何時かな…。
携帯を探そうと寝返りをうつと、目の前にはすやすやと眠る大輝の顔。予想外の近さに眠気が一気に覚めた。慌てて顔を引く。もう少しで鼻が当たりそうだった。
大輝の寝顔が可愛くて、思わず写メを撮る。か、かわいい…。
携帯を見ながらニヤニヤしていると、大輝の手が俺の手に触れた。寝相が悪いのか、ずっともぞもぞ動いている。
偶然重なった手を握る。心臓がドキドキしていた。今起きちゃったらどーしよう。ちょっと不安になりながらも、握った手は離さなかった。
こんなに近くにいるのに。
すぐ目の前にいるのに。
起きてしまったらもう手なんて握れない。
君の目が覚めた時、目の前にいるのは友達としての俺。
好きって言いたかった。
世界で一番なんて言ったら嘘っぽく聞こえるかもしれないけど。
世界で一番好きだった。
近い様で遠い、俺と君の距離。
せめて君の目が覚めるまで、そばにいさせて。
大輝の手を握った。
気持ち良さそうなその寝顔を、俺は静かに眺めていた。
-END-
好きな人の寝顔見ると幸せになれますよね。
とりあえずつっつきたい。
ほっぺたとかほっぺたとか。
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