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唐突すぎて、眠気なんて一気に吹っ飛んだ。心臓がバクバク煩い。
え?辻岡、今なんて…
"次"を想像して身構える。だけど今更飛び起きる事も出来ず、僕はただ体を固くするしかなかった。
辻岡は動かない。何も言わない。
すぐ近くにある辻岡の気配が、微動だにせず僕の事を見つめている気がした。
結局、それ以上の事は無かった。
辻岡はその一言だけを言った後、また何事も無かったかのように背中を合わせて眠りについた。
夢だったんじゃないか、と錯覚してしまう。そう思ってしまうほどに、部屋の中は静かだった。
窓の外から聞こえる風の音も、目を開けても何も見えない部屋の明るさも、何もかもさっきのまま。
1つだけ違ったのは、背中越しに感じる辻岡の鼓動の速さだった。
「目ぇ覚めたか。」
明るい部屋。窓からは朝日が差し込んで、眩しい。
どうやらいつの間にか寝てしまったらしい。しばらくの間は意識がはっきりしすぎて寝れないんじゃないかと思っていたけど。
「熱は………お、下がってるんじゃないか?ちょっと体温計取ってくる。」
辻岡はせかせかと部屋を出ていく。
その背中を見つめながら、夜中の事を思い出す
『…好きだ。』
夢、だったのか?
辻岡は、いつも通りだった。何処も変わったようには見えない。
変わったとしたら、辻岡を見る僕の目だろう。さっき額に手を当てられた時も、辻岡の顔を見る事が出来なかった。
意味分かんない。だって今まで全然そんな素振り見せなかったじゃんか。
なんでいきなりあんな事言ったんだよ、辻岡。
頭の中がぐちゃぐちゃになる。辻岡の言葉が何度も何度もリピートされて、好きという言葉の意味が分からなくなる。
考えたくない。嫌だ。僕の中の何かが壊れてしまう。
必死に、頭の中の辻岡を追い出そうともがく。
だけど、部屋から、布団から、僕が今着ている服から感じるのはどれも辻岡の匂いで、僕はまた泣きたくなった。
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