辻岡は友達か、と聞かれたら、

 きっと友達だと答えるだろう。


 
 辻岡が好きか、と聞かれたら、

 多分僕は、嫌いだと答えるだろう。






 辻岡は、客観的に見れば良い奴なんだと思う。

 大柄な性格だし、面白い事言ってよく皆を笑わせてるし、とっつきやすい。
 きっと100人に聞いたら、99人が「友達になりたい」って言うだろう。

 でも僕は辻岡の事が嫌いだ。

 コンプレックス、とまでは言わないけど、辻岡は僕には無い物を全部持っている気がした。

 男らしい逞しい体も、誰とでも仲良くなれる社交性も、頼りにしたくなる安心感も。
 全部、全部、僕には無いものだった。

 最初は、初対面でいきなりドチビメガネなんて言われたから、嫌いだった。
 なんて口の悪い、なれなれしい奴なんだと心の中で憤慨した。

 だけどその印象は時間が経つにつれて薄れ、代わりに膨らんだのは辻岡に対する劣等感だった。

 クラスの中で飄々としながら、それでも存在感を放つ辻岡。
 別に、全く関わりが無かったなら、何とも思わなかったんだ。中学の時だって、僕の友人に目立つような奴はいなかった。

 高校に入ってからも、それは変わらないと思っていたのに。

 僕の勝手な思い込みだって事は分かってる。辻岡は何もしてない。強いて言うなら口が悪いけど、そんなんじゃなくて。
 辻岡は何とも思ってないんだ。ただ、僕だけが、意味の分からない衝動で自分の事を追い詰めている。


 
 辻岡に声を掛けられる度に、新しい友人が出来た事への歓喜と、言葉では言い表せない様な居心地の悪さを覚えた。

 辻岡に触れられる度に、その手の温かさと、自分との体格差を感じた。


 辻岡と目が会う度に、

 
 何故だか僕は、泣きたくなるんだ。 










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