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無事カラオケBOXに到着した僕達は、平日で8人連れという事もあって一番広い部屋に通された。
クーラーの設定を一番低い温度にして、ドリンクバーのジュースをがぶがぶ飲み干す。結果は、まぁ、案の定というか辻岡の言う通りと言うか。
「ひっ、くしっ!」
「なんだその変なクシャミ。」
「うるせー。」
ぶるっ、と体が震える。
最初は快適だった室温も、今では肌寒い。汗を十分に吸ったYシャツがキンキンに冷えているせいで、裸で冷凍庫の中に居る気分だ。
他の奴らはそうでもないようで、皆思い思いにはしゃいでいる。今は笹谷が歌えもしない演歌なんか入れて、大袈裟な動きを入れながら熱唱していた(しかも音痴)。
「寒いのか?」
「ん、ちょっとだけ。」
ソファの上で体育座りをしながら体を温めていると、辻岡の手が急に胸元に潜り込んできた。
いきなり胸揉むなんてまだ夜になってないのに……じゃなくて。
「お、およしになってお代官様。」
「何言ってんだドチビ。」
辻岡は僕のボケをさらりと流して、僕のYシャツのボタンをプチプチ外していく。
やや本気で貞操の危機を感じて慌てて離れようとしたら、思いのほか強い力で引き寄せられた。両手で突っぱねたり、足をバタバタさせてみたりしても、全く動じない。
「おい辻岡、何響脱がしてんだよ〜」
「何急にどうした、ムラムラしたのか?」
「ばーか、そんなんじゃねぇよ。」
間抜けな笑い声が室内に響く。
ちょ、お前等助けろよっ…!
「……うひゃっ!?」
制服を脱がされて露わになった脇腹に、冷たい何かがぴたりと触れた。
見ると、辻岡の手が僕の脇腹を鷲掴みにしている。
クーラーやら制服やらで僕の体は冷えていたはずなのに、それでも辻岡の手は冷たかった。冷え症かよ。
辻岡に半分押し倒される体勢になっていた僕を、辻岡が片手で持ち上げる。
か、片手って…。
僕、そんなに軽いかな…。
「響、バンザイ。」
言われるままに両手をあげる。
「響、赤ちゃんみてぇ。」
「違うだろこれ兄弟だろ。」
さして身長の変わらない男に軽々と持ち上げられてしまったショックで、周りの声だとか今自分が何してるのかとか全然分からなかった。
結局、気付いたら僕は辻岡の体育着とジャージ(上着)を着ていて、気付いたら皆の前でマイクを握るハメになっていた。
「響、デュエット歌うぞ!」
「え、やだ「ほらもう入れたから」話聞けよ…。」
げんなりしながら、目の前の画面に映し出される歌詞に合わせて歌う。
辻岡とカラオケに来る度思うのだが、辻岡は音痴だ。笹谷なんて話にならない程の音痴だ。それなのにバカでかい声で熱唱するもんだから、隣で歌う身としては非常にやり辛い。
つられて音外しちゃうし、何より耳が痛くなる。
辻岡は今回も相変わらずな咆哮を僕の耳に突き刺してくる。うるさい。
吹っ飛びそうになるから、テンション上がって背中ばしばし叩くな。痛いってば。
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