砕けた心










 フェンスに手をかける。

 フェンス越しに見える世界はみんなみんな滲んでいた。
 
 
 
 
 
 伝えた言葉。

 はじめから無理だと分かっていた。
 君を放課後呼び止めて、誰もいない教室で想いを伝えた。

「好きなんだ。」

 喉が急に乾いた。心臓が破裂して倒れてしまいそうな程恥ずかしかった。




 君は僕に言った。
 「気持ち悪い。」と。




 教室から出て行く君の後ろ姿を、僕は見ることもできなかった。
 明らかに嫌悪感の込められたその言葉は、たったその一言は僕の心をいとも容易くグシャグシャにした。
 分かってるよ、そんな事くらい。でも伝えたかったんだ。

 心も体も幼い僕に生まれたこの気持ち。
 我慢なんて、できなかった。


 君とただ喋りたかった。
 君と一緒に居たかった。

 君のその笑顔を、僕だけのものにしたかった。




 …でも、もういいや…。




 フェンスに手をかける。
 目の前に広がる世界に僕を縛りつけるものなどなかった。





 秒速10メートル。刹那に浮かんだのは君の笑顔。

 まだ僕と友達でいてくれたあの笑顔。





 僕は祈った。
 もし生まれ変われるなら、もうこんな辛い恋なんてしないように…。








「アイ シ テ ル」


 そう言い終える前に、僕の体は冷たいアスファルトに打ちつけられた。







-END-





フェンスよじ登って屋上から落ちたって話。




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