君はまたいつものように窓際の椅子に腰掛けて空を眺めていた。その端正な顔立ちに僕の心臓は高鳴る。
君と初めて喋ったのは夏休みに入る前だった。
「メルアド教えてよ。」
それは夏休みに入る前になると決まってクラスで交わされる会話。その人に興味があるわけではなくとも、何かしら連絡をとる時の為に行う社交辞令のようなもの。
そうだと知っていても、僕は嬉しかった。理由はどうであれ、君が僕に話しかけてきてくれた。ただそれだけで幸せだった。
夏休み。
僕は勇気を出して君にメールを送った。残暑見舞いのメール。最初は普通のメールを送ろうと思ったけれど、学校でろくに話したこともないのにいきなり普通のメールなんて出来なかった。
送信ボタンを押した後、君からの返事は思ったよりもずっと早く返ってきた。なんてことのない、ほんの2、3行の返事だったけれど、君と少しだけ仲良くなれた気がして幸せだった。
夏休みが終わると、君は僕に話しかけてくるようになった。とても嬉しかったけど、そのせいで僕はもっと君の事を好きになってしまった。そうなると、考えることは"どうして僕は男なのに男の君を好きになったんだろう"とか"僕が女の子なら堂々と告白できたのに"とかそんなことばかりだった。
周りの目が気になって、自分の気持ちを伝えられないことが苦しかった。
何も知らない君は、僕に優しく笑いかける。
何気なく触れた手が、何気なく見せる笑顔が、どれだけ僕の事を苦しめているかも知らずに。
ある日君は僕に一緒に帰ろうと言った。まさか君からそんな事言われるなんて思ってなくて、とても慌ててしまった。君はキョトンとしていたね。
家の場所を聞いたら意外と近くて、少し驚いた。君は別世界の人だと思っていたから、実は近所に住んでいるんだと知って、なぜか少しにやけてしまった。
「お前、好きな奴とかいないの?」
いきなりだった。君が切り出した質問。
「いないよ―…」
これは…でもまさか。有り得ない展開を僕は期待していた。『実はお前のこと…』そんな甘い台詞が君の口からでるんじゃないか、なんて考えてた。
「俺今さ、気になってる女の子がいるんだ。」
ショックだった。
やっぱり君は女の子が好きな普通の男の子で、僕は頭がおかしかったんだ。きっと地面がひっくり返っても、君は僕の事を好きになったりなんかしない。
最初から分かってた事だった。叶わぬ片想い。決して。
君は僕に話し続ける。何を言ってたのか全然聞けてなかったけど、最後のあの言葉だけは覚えてる。
「俺、お前の事親友だと思ってるから話したんだぜ。恥ずかしいから誰にも言うなよ。」
少しはにかみながら言った君の言葉に、僕の心は潰されそうだった。
そう、僕達は最高の"友達"。
"恋人"には、なれないんだ。
-END-
どうしようもなく好きになった人に、こういう事言われると切ない。
友達以上になりたいんだ!
なんて言えないしね。
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