臨也が乙女、とにかく乙女






シズちゃん
いっぱい愛してくれて、いっぱい幸せくれて、ありがとう嬉しかった…

シズちゃんの事、凄く好きになれたよ。

シズちゃんには凄く感謝してるんだよ?本当に…感謝してる。だからもう一度だけ伝えてもいいかな?

俺を愛してくれてありがとう、俺もシズちゃんの事大好きだったよ。

俺の言葉がシズちゃんに届くと嬉しいなー、なんてね。

寂しいけどサヨナラしよう。
今までありがとう、バイバイ。


「なんなんだよ、一体…いきなりメール来たかと思ったらサヨナラだ?…どうゆう事だよ臨也…」


臨也からメールが送られてきたのはほんの数分前の事、突如切り出された別れ話に俺は動揺を隠しきれないでいた。

動揺している俺に気付いてかは分からないが、トムさんは後の仕事先は俺がいなくても大丈夫そうだから今日は帰ってもいいと言ってくれた。


「俺…臨也に何かしたっけな…?」


サヨナラを言われる理由が分からず、俺はタバコをくわえながらゆっくりと足を臨也のマンションに向けた。

どうして別れなければいけない?
俺も臨也もお互い愛し合ってるのに…


「なぁ臨也、お前の本音を教えてくれよ」



***



臨也のマンションに着き、部屋の前でインターホンを一度だけ押した。

数秒後中から鍵を外す音が聞こえ、ゆっくりとドアが開かれた。


「…シズちゃん…」

「臨也手前なんなんだよさっきのメールはよぉ?」


俺を見た臨也の瞳が嬉しそうに輝いたのは一瞬の事で、すぐに視線を横にずらして気まずそうにしている。


「なんで…?なんでここにいるの?」

視線をそらしたまま僅かに震える声で臨也は質問してきた。


「なんで…って、手前の送ってきた意味不明なメールのせいだろーが!」

「…来る必要ないじゃん…ッ」


なんで…なんで来るんだよ───
臨也は下を向いたまま弱々しく言った。

その瞬間、臨也の目から涙が一粒落ちた気がしてぐいっと顔をあげさせた。


「やっ…見ないで…ッ!」

「あ…?何泣いてんだよ!?」


改めてよく見てみると臨也の目は潤み、少し赤くなっていて泣いていたのだとわかった。

どうして臨也は泣いてるんだ?
俺が何か臨也にしたのか?


「なぁ、なんで泣いてんだよ?ちゃんと言わなきゃ分かんねぇだろ?」

「…言わない」

「臨也…俺は手前が好きなんだよ。好きな相手が泣いてるっつーのにほっとけるわけねぇだろ?」


そう言って俺は臨也の事を軽く抱き締めながら、頭を優しい手つきで撫でてやった。

こういう時はあの力が出なくてありがたい。どうやら好きな相手には力のコントロールができるようだ。これは臨也と付き合って初めて知ったことだった。


俺に抱きしめられ安心したのか臨也はぽつりぽつりと先ほどのメールの理由を話し始めた。


「俺は、俺は今だってシズちゃんの事好きだよ…本音を言ったら別れたくなんてない」

「じゃあなんで…」

「波江に…波江に言われたんだよ『どうせあの男はあんたの事なんて本当は好きじゃないのよ』って。それで俺不安になって…俺はシズちゃんの事すっごく好きだけどシズちゃんはどうなんだろうって、本当は俺の事なんか好きじゃないんじゃないかって…無理させてるんじゃないかって……」


ここまで一気に言った臨也は涙を流し、震えながら俺に強く抱きついてくる。

どんなに不安でもこんなに離れたくないのなら言わなければいいのに…俺の事を凄く考えてくれている臨也が愛しくて胸が苦しくなった。


「…くそッ、臨也!恥ずかしいから一回しか言わねぇからちゃんと聞けよ!」

「俺は他の誰でもなく臨也、手前が好きだ。気付いてなかったかもしんねぇけど、これでも俺余裕ねぇんだよ…ッ、臨也が離れていくのが怖くて不安で…安心しろよ、俺はずっと手前の隣にいるからよ」


俺の言葉を聞き、臨也は目を見開き口をパクパクさせていた。

そして止めの一言、


「離れていくな?こんなのこっちの台詞だよ!」


再び臨也の目から大粒の涙がこぼれ落ちた。


「シズちゃん、別れたいなんてバカな事言ってごめん…こんなにも俺の事思ってくれていたのに不安だなんて言ってごめん…ッ」

「不安なんて感情忘れるくらい愛してやるから…おもいっきり俺に甘えろ、臨也……愛してる」

「俺もだよ…シズちゃんッ」



不器用な恋





波江さんにからかわれて本気にしちゃう臨也さんって可愛くないですか(真剣)



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