ちょっと病んでる臨也をシズちゃんが支えてあげる感じの話。
最終的にはハッピーエンドです。







「…ここどこだ…?」


目が覚めると俺は見慣れない部屋にいた。
見た目はごく普通の寝室のようだった。
昨日何があったのか、どうして自分がこのような場所にいるのか思い出そうとするが、記憶があやふやで全く思い出すことができない。


「は?手錠…?」


自分の手に不自由さを覚えてふと視線を手元に下げると、手錠らしきもので拘束されていた。すぐに壊そうとしたが腕に力が入らない。いや、腕だけではなく体全体の力が抜けてしまったようになっていた。


「んだよこれ…っ!」


必死に手錠を壊そうとするが、部屋の中にカシャン…カシャンと音を響かせるだけに終わってしまった。俺は一度落ち付こうと部屋の中をもう一度見渡してみた。


「あ、シズちゃんやっと起きたの?」


視線がドアに向いた瞬間ドアが開かれ、入ってきた臨也が冷めた表情でこちらを見て言った。


「臨也手前のしわざか?ふざけんな!外せよこれ!!」

「ふぅん…シズちゃん用に特別な薬用意しておいて正解だったみたいだね」

「薬?薬ってなんのだよ!?」


体を思うように動かせない自分に苛立ちながら聞き返した。


「筋肉弛緩剤だよ、知らない?シズちゃん体に力入らないでしょ?」


臨也は嘲笑いながら小ビンを振ってみせた。


「力の使えないシズちゃんなんて怖くもなんともないね」


目の前で笑っているこいつが何を考えているのか、俺にはさっぱり分からない。


「手前、何が目的なんだよ?俺にこんな事して楽しいか?」

「…分からない?分からないよね、俺が今から教えてあげる」


そう言って臨也は笑顔を消して、ベットの上で横になっている俺に跨がるようにして座った。


「なっ…てめっ、何を…」

「教えてあげるってさっき言ったよね?おとなしく話聞いてくれないかな?」


今まで聞いた事の無いような凄みを利かした臨也の声に、俺は何も言えなくなった。


「今のシズちゃんなら簡単に傷付けることができるよ…いくらシズちゃんでも自分から痛い目にあいたくは無いでしょ?」


臨也はコートからナイフを取り出し、俺の頬にひたりと刃をつけた。


「っ!分かった、分かったから!おとなしく話聞けばいいんだろ!?」

「それならいいよ。…あのね、まず初めに言うけど俺がシズちゃんにこんなことしてるのは嫌いだからじゃないよ」

「…は?」


嫌いだからこのような事をするのだろう、と思っていた俺は拍子抜けして間抜けな返事をした。
『嫌いだから』ではない…では何が原因なのか?


「嫌いだからじゃねぇなら、一体なんなんだよ?」

「…シズちゃんってホント鈍いって言うか天然って言うか…うん、まぁそこがいいだけど…」


臨也は顎に手を当てながら一人でぶつぶつと言っていた。気のせいか、さっきまでの臨也の雰囲気とは違っているような気がした。


「…本当に分からないの?シズちゃん」

「あぁ」

「言って欲しい?」


そう言って臨也は俺の唇を人差し指でトントンと触った。噛み付いてやろうかとも思ったが、自分がこんなことをされている理由を知りたかったため、我慢することにした。


「あれ?噛み付いてこないんだ?めっずらしーね?」

「うっせ、さっさと理由教えろよ!」


俺の言葉を聞いた瞬間臨也は俯き、次に言う言葉をためらっているような素振りをみせた。

俺はそんな臨也を不思議そうに見上げていると、臨也の頬に一粒の雫つたっていくのが見えた。


「えっ!?な、おまっ…!何泣いてんだよ!?」

「っ、泣いてないし!」


バッと顔をあげた臨也の顔は、明らかに涙で濡れていた。


「泣いてなんか…」


フルフルと震えながら臨也は少しずつ口を開いていった。


「俺は…初めからシズちゃんのこと嫌いなわけじゃなかった。観察対象としてじゃない意味で俺はシズちゃんに興味をもった…まぁ、その…好きってことなんだけど…」

『興味をもった?俺に?好…き?誰が誰を?臨也が俺を…?』


突然の臨也の告白に俺は頭が回らなくなり、何も言えずにただ口をパクパクとさせるだけであった。

「驚くよね、普通は。でも本当の事だよ?」


寂しそうに呟く臨也に少し胸が苦しくなった。こんな事は初めてではない。殺し合いの喧嘩をしている最中だって何度も胸が苦しくなる事があった。その理由は、臨也のちょっとした仕草とか、ちょっとした言葉であった。


「シズちゃんは俺の事なんて嫌いだよね、分かってる…ごめんね、こんな事して…俺、感情が高ぶると歯止めがきかなくなっちゃうんだよね…」


臨也は俺につけていた手錠を外しながらそう言った。

俺は今まで苦しみの理由に蓋をして、自分の気持ちに嘘をついてきたのだがこんな臨也を見て気持ちを押さえ込む事など出来なくなってしまった。


「臨也…」


薬の効果が切れ始めた体に無理矢理ムチを打ち、黙って臨也を優しく抱き締めた。


「え?シズちゃん…?」


俺の腕の中でおろおろとしているこいつが堪らなくいとおしい。


「俺もだ」


もう自分の気持ちに嘘をつくのは止めよう、そう思った。


「俺も臨也の事好きらしい。いつからか…と言われたらよくわかんねぇけどよ、気が付いたら惹かれてたみたいなんだよな…」


すると臨也の目から再び大粒の涙がこぼれ落ちた。


「本当に?本当に俺の事好きなのシズちゃん?俺…シズちゃんの事信じてもいいの…?」

「もちろん、嘘なんかつかねぇよ。嘘ついたって良い事ねぇだろ?…今から俺はお前の恋人だ。思った事があったら遠慮せずに言え。不安になったらいつでも抱き締めてやるからな」


俺はにこりと微笑み、臨也をしっかりと抱き締めながら頭を撫でてやった。


「…うん。俺ももうこんな事にならないようにするね…シズちゃんがいてくれたら大丈夫な気がするし」

「俺が支えてやっから1人で気持ちを抱え込んだりするなよ?」

「うん」

もう臨也が暴走する事はないだろう。俺はこいつを守りたいと心から思っている。俺が支えてやるよ。一生、な………



愛してる、それだけのこと





途中で設定見失ってしまって焦った(笑)
男前シズちゃん大好きだ(*´Д`)はあはあ




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