来神設定
切ない話







「もうこの学校、この教室ともお別れか…早かったな」



卒業式が終わり、一人教室に戻って来た。

ふと窓の方を見ると、ベランダにシズちゃんの姿があった。


「あれ?なんでいるの?」

「…いちゃ悪いかよ」


声をかけても静雄は振り向きもせず夕日の方を見ていた。

しかし何か別の事を考えているのか、その瞳には何も映っていないように思えた。


「別に……ね、シズちゃん、一時休戦って事でちょっと話さない?」

「なんで手前なんかと話さなきゃいけねぇんだよ!」


シズちゃんは俺の発言に驚いたのか、勢いよく振り向いた。


「怒らないでよ。シズちゃんだって最後の最後に暴れるなんて事したくないでしょ?」

「…手前なんか企んでるんじゃねぇだろうな?」


すっごい人を疑ってる目をしている。

俺でも結構傷つくんだけどなぁ…


「やだなぁ、俺そんなに信用無い?」

「当たり前だ」

「えーっ、ひっどーい!」


ネカマの本気と言わんばかりに心境とは全く違う様に振る舞った。


「わかったから変な声だすんじゃねぇ」

「はいはい」


シズちゃんはこれで諦めてくれたらしく、おとなしくなった。



***



「ねぇシズちゃん…」

「んだよ」


しばらく世間話をした後俺が改まってシズちゃんの名前を呼ぶと、少し不機嫌そうに返事をしてきた。


「俺ね、シズちゃんの事好きだったんだ」


つい好きだった…とか言っちゃったけど本当は今でもシズちゃんが好き。




シズちゃんを好きになったのは高校の入学式の日だった。長身のうえ金髪という人込みでも目立つ見た目をしていたシズちゃんを見た瞬間俺の中に何かがはしった。式の最中はもちろん、式が終わった後も目を離さなかった。いや、離せなかった。




「ん…知ってた」

「シズちゃんは?俺の事…好き?」

「…おう」


本当は俺も知ってた。
シズちゃんも俺が知ってるって気付いてたはずだ。


「「……」」

「は、ははっ……俺達って本当馬鹿だよね。お互い好きだって気づいてたのに…毎日毎日飽きもせずにケンカしてさ」


お互い何も言えなくなってしまった。この空気に耐えられずについ本音がでてしまった。


「…」

「そんな事続けて気がついたら卒業。ほんとなにやってたんだろうね?…ねぇ、俺がシズちゃんに会った事は間違いだったのかな?無駄だったのかな?」


もう…止められない。次々と本音が零れだす。シズちゃんが好きで好きで好きで…苦しくて、切なくて、胸が締め付けられるようで…


「無駄なんかじゃねぇ」

「シズ…ちゃん?」

「俺は手前に会った事が無駄だとは思わねぇ。今までだってこれからだってそれは変わらねぇ。俺は手前に会って初めていろんな感情を知れたんだ。いろんな事を教えてもらったんだ」


そんなこと…知らなかった。シズちゃんの本音など聞いた事がなかった。


「そ、なの…俺知らない」

「手前は無意識だろうな」


本音を聞けて良かった。
今聞かなければきっと俺は一緒苦しみから抜け出せなかっただろう。


「もう手前と会う事も無いんだろうな」

「うん」


静雄はもう一度夕日の方を見ながら呟いた。


「普通に話すのもこれが最初で最後だろうな」

「うん」

「卒業しちまったら手前ともう会わねぇんだろうな」

「う、ん…」


顔をこちらに向けた静雄は、寂しそうにすると同時にすっきりした表情をしていた。


夕日に照らされていたため余計にその表情が際立って見えた。


あぁ、きれいな表情だ…。


「ばいばい…シズちゃん」


一度でいいから俺を抱き締めて欲しい…そんな事を思っていたら、願いが通じたのかシズちゃんは優しく俺を引き寄せ抱き締めて言った。



「臨也…ありがと、な」



俺はありがとうと言われるような事はしていない。むしろ礼を言うのは自分の方だろう。

だが知らず知らずのうちにあふれ出ていた涙に邪魔され、ありがとうと言う事が出来なかった。


だからせめて心の中で…



『ありがとう、シズちゃん』




夕焼けに照らされた君





切ない曲聴きながらかいてたらこうなった←

予定とかなり違うorz




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