×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -
2016 09/15

お題即興SS

「………勝手に行くつもりか?」
妙に聞き覚えのある怒気の含んだ声に足が止まった。おじいちゃんが抜けたな、なんて考えながら声のする方へ振り向く。
怒りと苦しさがない混ぜになって何とも言えない表情の零は七夜の正面に立ち、両手を伸ばそうとして―――。やめた。
出来やしない。彼女を止めることも、強引に閉じ込めることも。それは良心だけの問題ではなく、彼女の頭や話術で切り抜けられる。
「泣かないよ。」
一言、七夜はそう告げた。普段から涙を見せない七夜からわざわざそんな宣言を出されればすぐに嘘だって分かる。
悲しそうに俯き、零から視線を逸らした。
お互いに、何かを伝えようと口を動かそうとして、しかし言葉になることはなかった。

(零に出会えてよかったよ私の人生の宝さ。可愛い教え子、これからも強くあるように。)
(大切だからどこにも行って欲しくないんじゃと、伝えられん我輩は臆病者よ。)