だだっ広い草原。緑と青のコントラストは目を逸らしたくなるほど鮮やかだ。遮るものは何もなく、見渡す限り自然だけ。心が洗われるような光景は、今そこに立つ二人の心情とは限りなく遠いだろう。
この場所がどこかなんて分かりはしない。気がつけば中世の街並に放り出され、
見覚えのある顔に追い立てられた。顔だけが記憶にあるだけで、少なくともあんな現代じゃ悪目立ちしかしないような格好はしてなかったはずだ。
反り立つ外壁を無理やり通って飛び出た先が何もない場所。振り向けば嫌というほど視界を圧迫するはずの壁すらなくなっていた。
そして、傍らには零の姿もある。二人で共に壁門を抜けても、こうも忽然と消えられたら隣の存在さえ疑ってしまうものだ。
「明晰夢?」
「じゃろうな。それ以外考えつかん。」
二人は自身の体を見下げた。どこぞの騎士ユニットが着そうな衣装と腰に剣を佩いている。
「さて、音が近くなってきた。この場所だけ別空間になっているのかも知れない。」
「壁の外に出ることでその中に押し込められた、と。夢とは言え非現実が過ぎるのう?」
「零は存在が非現実だけど。」
「間違いないわい。」
周囲を警戒していた二人は不意に向き合った。
「夢なら試すことが叶わなかったまじないでもしてみようか。元の体に影響を及ぼさずに帰れるように。」
その言葉に零は綺麗に頷き、スラリと剣を抜いた。それを右手に持ち、もう片方の手を小指だけ立てて七夜に近づけた。そして七夜はその小指に自身のを絡みつける。
――約束だ
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