七夕
『土方、あれ何?』
雨上がりの昼下がり、巡回中にあるモノを指差した。
土方は「ん?」と指さす方向に目を向ける。
其処にあったのは、店先に飾られた笹。
その笹の先には色とりどりの紙が風に吹かれていた。
「あぁ、あれは短冊だ。願い事を紙に書いて笹に吊すんだ。」
丁度店から出てきた子供が、短冊を大事そうに抱え背伸びをしながら笹にそれを吊り下げた。
「お、おい!」
それを見て何を思ったのか、土方手を引き店に入る。
『すいません。短冊書きたいんですけど。』
そう店の人に告げると、定員は「いいですよ」と筆と紙を手渡した。
『ほら、土方も』
2枚渡されたうちの1枚を土方に押し付ける。
「お前、何書くか決まってんのか?」
『…世界平和?』
『うーん』と暫く悩んだ後に出された答えに、「馬鹿か」と土方は呆れ顔。
『家庭平和とかどうだ』
「いきなり規模が小さくなったな」
『そう言う土方は何て書いたんだ?』
手元を覗き込めば
「大したことは書いてねぇ」
『"マヨネーズとタバコ"…土方らしいな』
予想通りだと言うように肩をすくめる。
『…そうだ。これにしよう』
筆に墨を付け、短冊に願い事を書き込む。
出来上がったソレを土方に見せることなく、笹の一番高いところにつるした。
自分の短冊を見る目はどこか自慢げ。
「何を願ったんだ」と目を細め、短冊を見やればこぼれる笑み。
『なかなかシンプルで良いだろ?』
蒼を細め、口角を上げる。
「あぁ、一番妥当な願い事だな」
──幸せな日々をいつまでも──
この宇宙のどこかにいる家族、俺を家族の一員だと言ってくれた屯所の皆。
家族が幸せであれば、俺も幸せなんだ。
皆の幸せがいつまでも続きますように。
世界一傲慢で、自己中な願い
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