妖狐×僕SS 雨月物語 | ナノ


捜索  







今日は約束通り買い物に行ったのだが
予想以上に早く終わってしまった

マンションに戻りラウンジに向かうと
"バル●ンをやっているので入らないでください"
との貼り紙があった。

さしずめゴキ●リが出たんだろう。

結果、屋上庭園で読書をする事になった。

もう日が傾いている。
そろそろラウンジに入っても大丈夫だろう。

『さて、戻るか』



††††



ラウンジに向かうと何やら皆が集まっていた。



『どうかした?』


近くにいたカルタに問うと



「卍里と残夏が帰ってこないの。」


『!?』


おいおい、もう7時だぞ……

日が短い冬では、もう外は暗くなっている。
妖怪が出ても可笑しくない。


『俺が捜してくる!』

「おい…!待てよ!」


後ろで制止の声がかけられたが、今はそれどころではない。




速く卍里達を捜さなければ。





††††







ピィーッ




甲高い音が周囲に響き渡る。



3回程指笛を繰り返すと、草村からここら辺に住み着いている七歩蛇が2匹顔を出した。




「豆狸と百目の先祖返りを捜している。何処にいるかわかるか?」



すると七歩蛇は、赤い尻尾を東の方へ向けた。



あっちか



『助かった。ありがとう』



短く礼を済ませ、東に走る。




スパンッ!




さほど遠くない所から、空気を切り裂くような音が聞こえた。



クソッ!無事でいてくれ!





『卍里!残夏!』


公園に通りかかると2人の人陰が見えた。

その向かいには、腕が鎌のような形の生き物がいた。




やっぱり。


『"鎌鼬"か…』




相手を刺激しないよう、ゆっくりと2人に近づく。




「ひーたん、来てくれたんだ〜。まさかこんなことになるとは思ってなかったよ。ゴメン。」





いつも軽い口調だが、最後の一言だけはとても申し訳なさそうな、悔しそうな、そんな口調だった。




「氷雨…悪い…。」




下をうつむきながら謝る卍里を見て、素直で可愛いなんて思ったり。



『なぁに、卍里が謝る事じゃない。ほら、危ないから下がってろ。』


出来るだけ安心させるように笑顔で返す。



きっと、怖かっただろう。卍里も残夏も自分が非力な事は理解してる。





微かにれんや、ちよの声が聞こえる。

俺の後を追いかけて来てくれたんだろう。



これで卍里達は安心だ。





再び鎌鼬に向き直る。
















『さて、久しぶりの妖狩りだ。』


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