(幼馴染との再会は波乱万丈)


 名前は無理矢理拉致され、校舎内をノイトラと共に歩いている。といっても、ノイトラが名前が逃げ出さないように腕を掴んでいるので引きずられているがどちらかというと正しい。名前はやや冷や汗を書いて、綺麗なまでの校舎をちらちらと眺めた。真っ白い天井、壁、床。隅々まで掃除されているであろう校舎内は汚れ一つ目立つことなどなくて、名前は自身の学校とは大違いだと感心する。すると、ノイトラが立ち止まった。名前は立ち止まった反動で前のノイトラへとぶつかった。

『突然立ち止まらないで下さいっ…』
「あ、悪ィな。ほら、着いたぞ」

 教室上の札を見れば、3年V組。Aからかなり離れているなあ、と思っていたら、ガンと乱暴に足で扉を開けるノイトラ。その扉はかなりボロボロで一度壊れたのだろうか、大きなヒビが入っていてガムテープで何度も止められていた。それに引き攣った表情のまま、名前は教室へと無理矢理入れられた。
 そして、その瞬間、名前は音を立てて固まってしまった。カラフルな頭で目つきの悪い生徒たちの集団――。しかも視線は名前に一直線に注がれていて何とも言えないくらい痛い気分である。そんな中を進んでいこうとするノイトラをよそに名前は俯かせていた顔をちらと上げた瞬間だった。見知った顔を見つけて立ち止まれば、ノイトラはそのまま前のめりに倒れそうになった。

「てめっ…名前!! 何すんだ!!」
『…ウル』
「名前…お前、何している」
『この人に拉致された』

 ノイトラの怒声を耳に入れずに完全スルーの名前。名前の視線の先にいるのは肌が異常なまでに白く無表情な彼――ウルキオラは名前の幼馴染だった。ウルキオラはやや顔を顰めてノイトラへと視線を移した。

「…ノイトラ、これはどういうことだ」
「あァ? どうしたもこうしたもねェよ」
『いや、私には大問題なんですが』
「名前は黙ってろ」
『……ってか、なんで私の名前知って、』
「そいつを離せ。万が一乱暴でもした場合、俺がお前を消すぞ」

 ノイトラとウルキオラの睨み合いが始まった所で、名前はオドオドとし始める。これは逃げるチャンスでは、とばかりにそーっと後ろに下がる。と、その腕をがしりと掴まれた。名前は掴んだ相手を凝視すれば、それは水色頭の男。

『あ、あの…?』
「今逃げれば大変なことになんぞ。大人しくしとけ」
『い、いやいやいや!! 今逃げないとこっちが大変なんですよ!!』
「いや、グリムジョーの言う通りだ」

 そういったのは褐色の肌の金髪の女性。口にはマスクをしている。

「大人しくしておいた方が身の為だ」
『ええー………』
「ってかお前、あの二人の知り合いか?」
『いや、ノイトラさん?は知りませんけど…ウルキオラとは幼馴染です』
「ウルキオラの幼馴染だァ!!?」

 グリムジョーが素っ頓狂な声を上げれば、女性ことハリベルは「ああ、成程」と納得してしまった。名前はこの状況下、どうしようかと悩み始める。すると、ド派手なピンク頭の眼鏡男が名前に近づいてきた。

「噂には聞いていたけれど…キミが名前か」
『いきなりで呼び捨てですか。というか…噂、とは?』
「ウルキオラの知り合いにとびっきりの可愛い子がいるっていうね……でも、こんなちんちくりんな子だったとは」
『ちんちくりんって………なら、私は用済みですよね』

 一人で納得した名前は、グリムジョーが掴む腕を無理矢理振りほどいてザエルアポロの脇を通り過ぎる。そして窓を思いっきり開けば、口論をしていたノイトラとウルキオラが振り向いた。

「おい、名前…お前、何するつもり、だ」

 次の行動に、ノイトラは絶句することになる。名前は窓によじ登って次の瞬間、窓から飛び降りた。と思ったが、ノイトラが瞬時に移動し名前を掴んで教室へと引き戻した。

「てめっ…死ぬ気かッ!!!?」
「いや、安心しろノイトラ。コイツはこれくらいで死ぬ奴じゃない」
『そうですよ。中学時代に学校の屋上から飛び降りても無傷だったんですから』
「お前は一体何してんだよ……」
「確かにな。女のすることじゃないだろ」

 ノイトラの一言にはグリムジョーも同感だとばかりに頷いた。一方えっへんと言わんばかりに威張っていた名前は苦笑して「仕方なかったんですよ」と口にした。

『当時は色々ありましてね………ほぼウルの所為ですけれど』
「俺の所為にするな」
『大体、ウルが私に必要以上に絡んだ結果、女子の恨みを買って呼び出しに応えたら、暴力振るわれそうになって、仕方なく屋上から飛び降りたんじゃない』
「だからわざわざ高校は別の所に行ったんだろう?」
『当たり前でしょ。ウルとつるんでたら命が幾らあっても足りない。と思ってたら拉致されるなんて……って、いつまで腰に手を回しているんですかッ』

 名前はキッとノイトラを睨めば、ククッと彼は笑って更に自分の方へと引き寄せた。ウルキオラはそれにギロっと睨みを利かせて、また二人は火花を散らし始めた。名前及びクラスメイト達は大きな溜息をつくのだった。

「……あのー、ボクがココにいる意味あるんかな?」

 悲痛な市丸先生の声が上がったのだった。



(いい加減にして下さいってば!!)
(離せ、ノイトラ)
(嫌に決まってんだろ)
(……なんか、俺、アイツが不憫に思えてしょうがねぇ)

***
2011/04/04



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