1年くらい前の話だ。ベニオが「運命は絶対にあるのよ!」とか何とか話していたのは。俺とジョージはそれを呆れて聞いていたのを覚えている。大体運命なんてある筈ねえだろ。確か、こんな広い世界でたった1人の運命の奴探すのにどんだけの時間と費用が掛かるのか、と一蹴した筈だったな。まあ、今思い出してもどうにも思わない他愛ない話なんだが。そして今日は入学式。いつも通りバイクで登校すればジョージを見つけてバイクを止めた。そしてジョージが見つめる先――皆水の巫女と見なれない奴が親しげに話しているのが見えた。

「知らない顔だな。ずいぶんと皆水の巫女と親しいそうじゃないか…アイツ、編入組か?」

 ジョージは俺の質問に応えることなく赤髪の少年を眺めていた。そしてその4人がいなくなった直後の事だった。胸元までの黒髪を風になびかせて、掲示板の前に立つ一人の少女。その女が俺たちの方を見た。その時だった。ふいに視線が交わった瞬間、ズドンと雷が落ちたように体全身に電流が流れたみたいな感じになった。

「おい、テツヤ。お前、大丈夫か?」

 ジョージの心配の声も耳には届かず、俺はバイクから降りてふらふらと彼女に近づく。 ジョージが後ろで何か言っているが、もう完全に俺には聞こえない。彼女の目の前で止まれば、彼女は「え」といった風に俺を凝視する。

「名前……」
『え、…な、まえ?』
「そう、名前教えて」
『名字・名前……ですけど』
「名前…」

 確認するように彼女――名前の名前を口にすれば黒曜の瞳が僅かに揺れた。そして彼女のとても小さくて細い白い手を取る。

「お前だ…」
『え…?』
「特別に可愛いってわけでもないが、お前が俺の運命の人だ」
『……ふ、』
「ふ?」
『ふざけないで下さいッ』

 ばっと握っていた手を思いきり振りほどかれた。少し、というかかなりショックだったりする。後ろでジョージの呆れた溜息と、民衆のざわめきが聞こえた。

『失礼しますっ…』

 颯爽と去って行ってしまったラウラの後ろ姿をじっと眺めていれば、いつの間にか隣にジョージが来ていた。そして肩に手を置かれて軽蔑の眼差しを向けられた。何でそういう目で見るんだよ。

「何してんだよ、テツヤ…」
「名前か…何組なんだろうな」
「お前、人の話聞いてんのか……?」
「ジョージ、やっぱベニオの言ってたことは嘘じゃなかったぜ」
「はあ?」

 ――運命って、やっぱりあるんだな。

 その一言にジョージの顔色が変わった。何を言っているんだ、こいつみたいな。そう思われても仕方ない。だけど、本当に雷が落ちたんだ。ズドンってな。俺だけにしか分からないだろうけれども。




(なんだったの、さっきの…ピシャーンて雷が落ちたみたいな……)
(アイツ……寮に入んねぇかな〜)





***
(Title by これは運命)
2011/04/04



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