『いい加減にして下さいっ!!』

 虚夜宮の一角で、また今日も怒号が上がった。またかと言わんばかりに周りの住人達は呆れた視線を、怒号を飛ばした者とその目の前にいる者に向けた。

『またそんなセクハラ発言して……セクハラ発言は藍染様だけで結構です!!』
「………(泣」
「おーい、藍前サマが落ち込んじまったぞーナマエ」

 遠くの方で水色髪の男――グリムジョーが叫ぶが、彼女はそれを聞き入れることはなかった。彼女は目の前の長身男を睨みつけて、今にも抜刀し兼ねない様子だ。その目の前の男ことノイトラは、そんな様子を見ても動じることなく口角を吊り上げて笑っている。

『貴方のそういう態度が大っ嫌いなんですよ!!』
「俺はお前のそういう強気なところが好きだぜェ?」
『からかうのも対外にして下さいってば!!』

 まさしく、狼と羊の対決。誰もそれの仲裁に入ろうとしないのは、入るなりの覚悟がいるからである。前に巻き添えにされた覚えのあるグリムジョーとしては遠くから見守りたいらしい。

「だから俺のモノになれよナマエ?」
『だーッ!! だから、どうやったらそういう発想に辿りつくんですか!? 貴方の脳みそ、グリムジョー並みに可笑しいんじゃありません?!』
「…なんか、俺物凄く家に帰りたい」
「…ドンマイだ、グリムジョー」

 しゃがみ込んでのの字を書き始めるグリムジョーの隣でウルキオラが宥めに入る。こんな様子が見れるのも、ナマエのおかげではあるが十刃としては有難いとは思わない。

『もう、帰りますッ!! ハリベル様、いいですよね!?』
「私は構わないが」
『ということで、帰ります。今日一日、いえ明日からも付き纏わないで下さいね』
「バァーカ。好きな女に付き纏わないでいられるワケねェだろーが」
『イラッ)……ハリベル様、帰りましょう!! スンスンにでも美味しい紅茶淹れて貰います!!』
「そうだな、そうしようか」

 そういいハリベルの隣に来て、ナマエは「行きましょう」と宮へと促す。だが、その一歩を踏み出した時だった。ぐいっとナマエは後ろへと体が倒れてすっぽりと受け止められる。それに更に額に青筋浮かべてしまった。

「誰が行かせるっつった?」
『だぁーかぁらぁ……いい加減にしろ糞ヤロー!!!』

 ナマエが瞬時に強烈な蹴りを入れれば、片手で簡単に受け止められてしまった。それに怯んでしまったナマエをノイトラは見逃さずに、ダンッと壁際に押し付けられてしまった。

『っ……ったい…』

 両手は抑えつけられて抵抗できる状況ではない。ノイトラはずいっと顔を近寄せれば、ナマエはギンっと睨みつける。

「ったく…そうやると益々可愛く見えるぜ?」
『っ〜〜…も、やだ。離して』
「嫌に決まってんだろ」
『私も嫌です。それでもって貴方が嫌いです』
「……そうかァ」

 ナマエの言葉にニヤリと口角を更に吊り上げたノイトラに、ナマエは身の毛が逆立った。そして近づいてくる顔に「え?」と戸惑い、必死にハリベルやその他もろもろの名を叫ぶが、誰も助けに入ろうとはしない。

『え、ちょっ、…やだやだやだやだ』
「大人しくしてろ」




(いやだぁぁああぁあぁあっ……)
(おー……すごい悲鳴やなぁ)
(ってかキスしやがったよ、アイツ)
(ナマエが泣きだすのも、時間の問題だな)
(ってか、ナマエの急所蹴り入るぞ)

***
(Title by Discolo)
2011/04/03



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