(――恋じゃないか)
「………」
Gは、今日何度目かになる溜息をついた。それを見ていた隣の席のジョットは苦笑いを零した。
「どうしたんだい、G? 何かあったのかい?」
「…体調が優れねぇだけだ」
「俺はそうは見えないんだけどな。もしかして、弓道部の後輩の事じゃないのかい?」
図星を突かれたGは言い訳も見つからずに沈黙した。それを見てジョットはクスクスと可笑しそうに笑う。
「名前ちゃん、だっけ? その子がどうかしたのかい?」
「……チッ」
「あれ? Gの機嫌を損ねることでもされたのか?」
「違ぇよ……ただ、なんつーか…アイツ見てると具合悪くなんだ」
「へえ、例えばどんな風に?」
少し興味を持ったジョットは楽しげに訊ねる。それにGは仕方なく答えた。
「良く分かんねえんだけど……見てるだけで熱っぽくなってダルくなるし、心臓を鷲掴みにされたっつーか…そんな感じだ」
「あー…ハートキャッチな」
「どっかのキャッチフレーズか」
Gのツッコミを華麗に無視するジョットにGはこめかみをひきつらせた。ジョットは「成程」と笑った後、満面の笑みをGに向けた。
「なんだ、気持ち悪ぃな」
「酷いな、G。折角答えを教えてやろうと思ったというのに」
「答えだ?」
「ああ、その原因は何かって」
「お前、分かんのかよ」
「んー…多分、間違っていないよ」
クスリ、と笑うジョットに、Gは黙った。超直感が利く奴だ。間違ってはいないだろうと思ったのだ。そしてその答えを聞いて彼は硬直する事になる。
(……あ゛?)
(ははっ、やっとお前にもそんな感情が芽生えたか)
(ふざっけんな! 誰が(G先輩いますかー?)っ……!!)
(ナイスタイミングだ)
***
2011/03/31