両脇に男、真ん中に女。これは逆の両手に花というところだろうか。色黒のエジプト人たちの中を色白の日本人が3人並んで歩いていたら目立つどころじゃない。

『ねぇ、どうして両脇歩くの』
「んー?可愛い女の子に端を歩かせるっていうのもどうかと思うけど?」
『お世辞をどうも。でも、それは花菜にいったら喜ぶと思うよ、山本君。あと女の子って歳じゃない』
「ははっ。世辞のつもりじゃねぇよ。それに俺から見たら中学から変わってないぜ」
『それは中身?それとも外見?』

 山本の言葉に少し眉を顰めた名前は、目を細めてちらと山本を見上げた。山本の方は名前を見下ろす形だ。二人には身長差がありすぎるのだ。

「んー、そうだな………両方かな」
絶対喧嘩売ってるよね
「喧嘩ッ早いのは昔から変わらないよね」

 ベシッと雲雀の頭を叩いて、名前は大きな溜息をついた。雲雀はゆっくりと叩かれたところに手を伸ばして痛くもないのに擦った。そんな様子を楽しそうに山本は笑ってみているのだ。

『で、お兄さん方。さっきからモテモテですね』

 エジプト人の女性たちが、すれ違う山本と雲雀をちらちらと色目で見ているのだ。

「はははっ。それは困ったな」
「ほんと、さっきからジロジロと…色んな視線がね」

 雲雀は口角を吊り上げて、ちらりと背後に視線をやった。女性たちの視線以外に、数分前から感じていた物陰からの鋭い殺気を込めた視線。3人は気づいてはいたが、安穏に街中を気づかないふりをして歩いていたのだ。

『どうするの。殺んの、殺んないの、撒くの?』

 彼女の選択の中に逃げるという言葉がないのは、雲雀が嫌う選択肢だからだ。

「撒いても結局追ってくるだろうからな…」
「次から次へと新しいのが来るものね」

 そういい、いつの間にか仕込みトンファーを構えている雲雀に、山本は笑って刀に手を伸ばした。名前はレッグホルスターから自分専用のオリジナルデリンジャーに手を伸ばすことはない。
 自分の出る出番がない事を知っているので、立ち止まった二人を無視して歩いて行く。「気をつけろよー」なんて言っている山本にひらひら手を振って、街中をただふらふらと歩く。後ろから爆音や悲鳴や絶叫に断末魔、雲雀の楽しそうな笑い声が聞こえてくる。
 私も危ない人生に進んだんだな、と彼女は改めて実感する。まぁ、生まれた時からなのだが。バベルファミリー時代から変わりない。それにそれぞれが自分の考えでボンゴレの支配下に下ることを決めたのだ。今更文句はない。ふ、と思い出し笑いで口元が緩む。この歳で昔を何度も思い懐かしむなんて、とまた笑みがこぼれる。

「さて……もうそろそろ、ホテルに戻ろうかな」

 そう呟いた時、ヴーッヴーッと携帯のバイヴ音が鳴った。ディスプレイには、「藤原花菜」。見つかったのか、と迷わず通話ボタンを押した。

『もしもし?』
≪あ、先輩!ツナの居場所分かりましたよー!≫
『早かったね。今、丁度ホテルに戻る途中』
≪それは良かったです!ツナ、ギザの三大ピラミッドに向かったみたいなんですよっ≫
『あぁ、あの有名な観光地に。でもボスがピラミッドに興味示すなんて、考えなかったな』
≪私がピラミッドって言ったおかげですね!じゃあ、部屋で待ってます!≫

 花菜の明るい声に名前は笑って電話を切った。そして足早に人目を避けるようにしてホテルへと急いだ。



■  □  ■




 名前はホテルに着くと真っ先に自分と花菜の部屋へと向かい、静かに扉を開ければ中には何やら気難しそうな表情をしている花菜と獄寺。二人の邪魔にならないようにそっと音を立てないように扉を閉めて、何をそんなに考えているのかと二人の間にあるモノを覗こうとする。二人の間にあるものは、トランプ。どうやらポーカーをしていたらしい。

『気を使った意味なかったよ』

 余程真剣だったのか、名前の言葉に飛び跳ねて反応した花菜は「ビックリしたぁ」と丸い目を見開いて言った。

『お遊びに熱心とは、珍しいなと思ってね』
「だって暇なんですもん。ごっきゅんもなかなか相手してくれませんし」
「るせーよ。てめぇ今不利な状況にいんの分かって言ってんのか?」
それとこれとは話が別です

 そんな二人の会話を聞きながらソファに腰掛ける名前はクスクスと笑った。明らかに喧嘩腰の##NAME2##とすぐに喧嘩を買う獄寺。仲がいいのは良い事だと名前は頬杖をついて見ていた。

『罰ゲームはあるの?』
「ないでー「ある」えぇ!?聞いてませんよそんなの!」
「今言ったんだから当然だろ。俺が買ったら今日の酒代出せよ」
「なっ…!じゃ、じゃああたしが買ったらブランド物のバッグ沢山買って貰います!」

 どっちもどっちだなぁ、と思いながら名前は背もたれに体を預けた。「寝んのか」と訊ねてきた獄寺に、小さく頷いてネクタイを緩めて目を伏せた。花菜がニヤリと不敵な笑みを浮かべて獄寺を見れば、明らかに不愉快そうな表情を獄寺は見せる。

「気持ち悪ぃ顔してんじゃねぇよ」
「失礼ですねー。人が折角良い事思いついた時に」
「どーせロクでもないことだろ」
「えぇ?そうでもないですよぉ?」

 ニヤニヤ笑う花菜の声は明らかにいつものものではなく、何かを企んだ時の猫撫で声。そして花菜はそっと獄寺に耳打ちをした。

「席交換しましょーよ」
「は?別にこんままでいいだろうが」
「馬鹿ですねぇ。こういうのには必ずお決まりの展開があるでしょう。ほら、寝ている女子が男子の肩に寄りかかってくるっていう」
「……アホくさ」

 獄寺の言葉に花菜はむっとして目つきを鋭くした。

「だってあたしじゃ先輩のこと支えられませんもん。肩幅狭いんで。それにこういう時こそ行動に移しておかないと、あとあと後悔するのはごっきゅんですよ」

 もう呆れてものも言えない獄寺は、強引に花菜に立たされて席を交換する羽目になった。ちらりと隣を見れば、すやすやといつも通り規則正しい寝息を立てて寝ていた。
 相変わらず即行で寝た名前を呆れる訳でもなく優しい眼差しで見て、獄寺はその肩に手をまわして自分の方へと引き寄せた。花菜は有名な不思議の国に出てくる猫のような笑みを浮かべれば、獄寺に手加減なしのデコピンを食らったのだった。



---アトガキ---
110321

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