▼出逢えたキセキ
※人間主
「ねぇ、狒々様」
「なんじゃ?」
「風の噂で、狒々様はぬらりひょん様よりもお強いとお聞きしました。…何故わざわざ奴良組の配下に?」
「あぁ、その話か…」
今日は満月の映える夜。
狒々となまえは縁側で二人、月を肴に月見酒を飲み交わしていた。
「ぬらりひょん様を退き、ご自身が魑魅魍魎の主になろうとは思わなかったのですか?」
「思わなかったなァ。彼奴に適う面白い奴ぁ滅多にいないからのォ。ついて行きたくなっちまったんじゃ、キャハハ」
しみじみと懐かしそうに言う狒々に、なまえはもうこれ以上この事については深く言及すまいと誓った。
「では何故、私を拾われたんですか?」
しかし、それとこれとは別の話だ。何しろこの質問こそが何より聞きたかったことなのだから。
「なまえをかァ?そんなのただの気紛れだ、特に意味はなかったな…」
「そうですかぁ」
「なんじゃ?今更そんな事聞いて」
「いえ、特には。…ただ狒々様に出逢えたことに、拾われたことに感謝したいと」
始まりが偶然だろうと気紛れだろうと…今があるからこそ、どんな始まりにも感謝できる。
「狒々様と今こうして酒を交わせて…私は幸せ者です」
「そうかそうか!儂に拾われて幸せか!っなら一生儂のそばにいろ、儂の女になれ」
「……え?狒々様の女に、ですか?それは…つまりその」
「儂と夫婦になってくれんかのぅ」
出会って4ヶ月、拾われて4ヶ月…
大切に大切に愛でられ生活を共にしてきたが、まさかそう言われる日がくるとは思ってもみなかった。
自分のこの想いは一生、心の奥深くに隠して生きていくものだとばかり思っていた。
「なまえ…愛してるぜェ」
夢のような気分になまえはぽろりと涙を流した。応えていいのだろうか?自分の気持ちを素直に吐いてもいいのだろうか?
…考える必要もない。彼に告げられた今この時、なまえの心はすでに答えを決めていたのだから。
「…はい。私も、ずっとお慕いしておりました」
そっと二人の唇は重なり合った。
こいごころ。のYUKI様へ
無駄に長い上にツマラナイものですが、よろしければ頂いて下さい。
mugi.20111008
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